お店

心筋梗塞 その3

「負のスパイラル」 ネガティブな言葉を板前日記に書き綴ったのはたぶん初めてです。 「店が暇だ」とか「ちっとも景気がよくならない」とか「銀行との関係が大変だ」なんていうまわりの方々まで意気消沈するような言葉は、実際にどんな落ち込んでいても書い…

 心筋梗塞その2

心臓のカテーテル治療が無事終わり、集中治療室に移されたのが深夜過ぎ、意識ははっきりしていますし、治療が成功した安心感もあって、つまった血管さえ通ればすぐに退院できるものという淡い期待をもったのもつかの間、心臓は私が想像するより遙かにデリケ…

 心筋梗塞

昨年、12月22日日曜日のことでした。 フィギュアスケートNHK杯 最終グループの演技が始まろうとするのをぼんやりと見ていました。そろそろ安藤美姫・・・というとき、胸にこれまで感じたことのない痛みが襲いました。 大概の痛みはしばらく横になっていれば…

 サービスの流儀

先日NHKプロフェッショナルの流儀再放送で、メートル・ドテル宮崎辰さんの回をやっと観ることが出来ました。 きめ細やかな心配りは、私たち料理店を営むものにとってとても勉強になることが満載でありました。 しかしながら、駆け出しのメートルがあのサービ…

 自分の店だけ・・・ってのはありえない

この不況の中、連日連夜満席がずっと続いているという料理店は、全国を見渡しても多くはありません。 たとえ繁盛している店でも波は必ずあるはずで、忙しい店は忙しい店なりに少しでも客足が鈍ると不安に陥るものなのです。 二日暇な日があれば、明日は大丈…

 卵焼きの問題

卵焼きは小学校4年生から焼いています。 すでに○十年・・・とはいっても、20年焼き続けた職人と30年焼いてきた職人の味が違うかって言うと、それほどのもんじゃぁありません、卵焼きですから。 普段は仕出しのお弁当のために焼く卵焼き、以前に「たまにはお…

 初行列

今日は身体のメインテナンスの日。 痛んできた腰を、私のゴッド・ハンドに癒やしていただこうと、朝イチで東京へ出かけました。 夜の予約のためにとんぼ返りで新幹線に飛び乗る時間がちょうどお昼時、最近充実している東京駅もしくは大丸でお弁当でも買おうか…

新就職先

年末の一ヶ月間 店に研修に来てくれていた、当時調理師学校の学生が、就職後初めて店を訪れてくれました。 「どう?慣れた?仕事は順調?先輩は?」などという私の質問に 「仕事はやっぱり大変です。でも一番大変なのは、ここで勉強させていただいたような板…

 水の問題

メディアで有名なイタリアン シェフの店で、有料の水問題がnetをにぎわせていました。 今回の場合は、断り無しに有料の水を提供したこととその値段に焦点が当たっていたように見えたのですが、水有料問題は料理屋にとって悩みの種でもあります。 最近では高…

 明暦歴露堂々

手取川の「露堂々」は手取川の中でもとりわけ好きなお酒です。 「露堂々」は手取川では「つゆどうどう」と読んでいますが、禅語で「明暦歴露堂々」(めいれきれきろどうどう)の言葉からとっているのだそうです。もちろん私は後で調べて知りました。 先日の…

涌きいずるクレーム

乙武洋匡と有名イタリアンレストランとの「車椅子で店に入る、入れない」のtwitterでのやりとりは、周りの評論したがりを巻き込んで燃えあがっていました。たまたまリアルタイムで乙武さんのtweetを見ていたものですから、「こりゃまずいなぁ」と他人事とは…

 二郎さんの収支

下世話なお話で恐縮ですが、「二郎のは寿司の夢を見る」のすきや橋次郎さん。客単価が最低ひとり3万円。10席が昼夜一ヶ月先まで予約で満席と聞きます。 ってことはドタキャン、席の半端を考慮に入れても一日の売上が50-60万円。稼働日を年280日としても年間…

料亭はなくなる運命なのか?

前回に続く話題 全国で老舗料亭が閉店の憂き目に遭っていると聞きます。 前回書いたように、私が若い頃には料亭は日本料理店の華で、あこがれの存在でした。 落ち着いた佇まい、手入れの行き届いた庭、四季に応じて整えられる調度品の数々、静かに客をもてな…

 老舗の行く末

市内のある老舗ホテルが会社更生法の適用を受けたそうです。 とはいっても、会社の権利が譲渡され営業は通常と変わらず行われているのですが、昔からなじみのあるホテルであるだけに会社更生法という事実はショックです。 実際には、それよりも以前に経営を…

 四川の風

板前日記を更新する時間がとれなくて遅くなってしまったのですが、先週お昼に「招福楼」さんに伺ったあと、最終日にぎりぎり間に合った会田誠展をたっぷりと堪能し、夜は「飄香 - ピャオシャン」さんへ。 中華料理の信頼する職人さんに「東京の中華 今ならど…

和食点心〜美意識の違い

久しぶりの東京での昼ご飯。夕食が重めの予定でしたので、「お昼は軽めに和食でお弁当でも」と予約したのは招福楼東京店(丸ビル内)でした。 近江の本店にお邪魔したのはすでに十数年前ですが、その印象はいまでも鮮やかに心に残っている日本料理の名店中の…

杜屋さんのジャム

杜屋さんのジャムです。 以前に紹介したことがありましたが、職人の鏡ともいえるその仕事への姿勢にさらに畏敬の気持ちを深めもう一度。 ジャムには防腐剤の類いはもちろんペクチンも使用していないので、封を切って常温に放っておくとカビが正しく生えるの…

惜しい!*5

休日に車ででかけた、とある街でとんかつを食べたのです。 以前から名前を聞いていて「近くに寄ったときには一度伺わなくちゃぁ」と思っていた店。ロースカツそのものはものすごく上手に仕上がっていて、そりゃぁ美味しいんであります。 肉質も素晴らしいし…

 ものの価値〜その2

昨日の続き くれぐれも くれぐれも誤解のなきように申し上げておきたのは、価値がわからなければ店を利用すべきではないとは思っていないということ。 店の側がお客様に提供していることをすべて理解するというのは不可能です。というよりも、100%でお客…

 ものの価値

昨日話題にしたアンヌ・グロのリッシュブルーというワインは、一般的なお客様が気軽に注文する値段のワインではありません。 ただ、ブルゴーニュワインの魅力にとりつかれたワイン好き、しかもある程度のお金が自由になる方にとっては何度でもどっぷりとつか…

さりげない笑顔

週末にでかけた温泉宿は扉温泉の「明神館」でした。 近頃では星野グループを始め、旅館にも若いスタッフが多く働くようになってきたと聞いていましたが、「明神館」も見事に20-30代のスタッフばかりが表にたってお客様に接していました。昔の「温泉宿=おば…

恨ミシュラン

世界中を見渡して、日本ほど食のレベルが高い国はないといわれることがしばしばあります。 世界中各国の料理が食べられる店が存在し、食材と調理技術の水準が高く、何よりきめ細かなサービスがあらゆる店で受けられる。 フランス在住のあるお客様は「日本で…

 ド宴会には歌がつきもの

ド宴会には歌がつきものでした。 若い方は想像しにくいでしょうが、私たちのような料理屋でも昔は酔えば歌がでたものです。芸者衆が入る(昭和40年代くらいまでは当たり前のように芸者衆も宴会にはつきものでした。コンパニオンなんて影も形もない頃です)本…

 ど宴会

私が料理の世界に入った昭和50年代は、日本料理店の主流は宴会でした。 料理屋には食事を愉しむために行くというよりも、宴会に出席するため、もうちょっと小規模でも会合のために出かけることが多かったのです。 宴会には芸者衆 コンパニオンのお酌が入り、…

名店の愛すべきほつれ

私など一生手が届かないほど高いレベルで仕事をしているお店。憧れの料理人のお店。料理好きなら誰もが知る有名店は全国に数多あります。 私なんぞ、同業ではありますが、気持ちの上ではほとんど神格化してしまうほどの名店もあるのですが、そういう店に伺っ…

気づかなかった

以前に取材をしていただいた記事が本になってすでに店頭に並んでいることを知ったのは、同業者のfacebookを通じて昨日のこと。 そういえば、九月中頃の出版とか聞いたっけ、と、休憩時間の買い物途中に近所の本屋さんを覗いてみると、ありました、 「浜松 上…

 隠れた小さな自慢

前回「お客様の情報があればあるほどきめ細かなサービスには有利」と言いました。 お得意様であればあるほど、通ってくださればくださるほど、お客様にとって心地いいおもてなしがどんなものであるかを知ることができるのです。 調理場では毎日こういう情報…

 大切なお客様

接待で店を使ってくださるお客様は、よく「大切なお客様をお連れするのでよろしくね」と予約の時点でおっしゃいます。 もちろん私たちにとってはご来店くださるすべてのお客様にできうる最上のおもてなしを心がけていますから、「はい、かしこまりました」と…

 不思議なこと

店ではできるだけ多くのお客様に日本酒の美味しさをお伝えできるようにしています。 お奨めをして日本酒を召し上がったお客様の中に 「あっ、これはダメ。美味し過ぎちゃう」もしくは「これは危ない。飲み過ぎちゃう」 とおっしゃって、日本酒は一口だけ、早…

ワンフレーズの本質

もう本当に恥ずかしいくらいに「褒められて伸びるタイプ」な私です。 長時間の仕事も、分不相応なほど必死になって使う素材も、お客様の「美味しかったぁ」の一言ですべてチャラにできてしまうというのは、すべての料理人に共通することのはずです。 店で直…