心筋梗塞 その3


「負のスパイラル」 ネガティブな言葉を板前日記に書き綴ったのはたぶん初めてです。


「店が暇だ」とか「ちっとも景気がよくならない」とか「銀行との関係が大変だ」なんていうまわりの方々まで意気消沈するような言葉は、実際にどんな落ち込んでいても書いてしまっただけでoutな感じがしますから、日記に書くことはありませんでした。どんな小さな店でも90年間上向きのみなんてありえません。小さな浮き沈みに一喜一憂するのが経営者の端くれである人間には変わりはないのです。


まっ、今回だけは体調も精神も人生最悪時のつぶやきではありました。


が、
大丈夫


とりあえず生きていさえすれば何とかなるモンです。60年近く人生を経れば、悩んで眠れない夜を悶々とすることなど数知れません。


一歩間違えばあの世に旅立っていたところから生還できた上に、大きな後遺症に悩まされることもなく完全復帰できそうなのですから人生最高の「ラッキー!」であったのです。


負の部分はいつものようにジタバタすればどこかでなんとかなるかもしれません。それよりも連れ合いと子ども達の絆を深く感じることが出来、友人仕事仲間の友情と信頼を再認識し、なによりお得意様達の暖かい気持ちに支えられていることを長い仕事生活で一番熱く感じられたことは、家庭人として、料理人として得がたい経験でありました。





緊急搬送された総合病院で最初に出迎えてくれたのは店に何度も足を運んでくれているお医者様


「あれぇ。。。びっくりしたぁ。どうしたのぉ。大丈夫、準備はできてるからね」


その一言を、存じ上げてる方にいわれただけで「助かるかもしれない」の気持ちは強くなります。


さらに店には医療関係のお得意様は多いものですから、翌朝から20年来のお得意様である救急センターの偉い方が病室を訪れてくださり「よかったねぇ。順調にいきそうだよ」と。さらに別のお得意様お医者様も「命拾いしたねぇ」 次々と。


店であうお得意様達のお医者様達がベッドに寝る私に声をかけてくださるだけで心強く全快したような気分になれます。重篤な事態でも自分が守られている感をひしひしと感じるのです。





さて、そうした安心感を糧に無事退院し、自宅での静養を経て、今は仕事に復帰できました。体調に配慮しつつですが、ほぼ完全復活といっていい状態です。


これからは週休二日、年に4回は温泉旅行と1-2回の海外旅行とコンサート行き放題。。。のゆとりのある仕事・・・というわけには全くいくはずもなく、地道にこつこつと今まで通りに仕事に磨きをかけていきます。どうぞ温かい目でお見守りください。