ワンフレーズの本質


もう本当に恥ずかしいくらいに「褒められて伸びるタイプ」な私です。


長時間の仕事も、分不相応なほど必死になって使う素材も、お客様の「美味しかったぁ」の一言ですべてチャラにできてしまうというのは、すべての料理人に共通することのはずです。


店で直接いただくお褒めの言葉はもちろん、サイト上で褒めてくださる方々の言葉の一つ一つで「明日もがんばれる」「もうちょっといい仕事に向かえる」とモチベーションを高めてくれるのです。それらのお言葉は料理人冥利に尽きる「この仕事を続けてきてよかった」と幸せに浸れるご褒美なのです。



お客様のお褒めの言葉も、サイト上のお褒めの言葉も、板前日記で紹介して自己満足に溺れるような破廉恥はすまいというスタンスでいままでやってきましたので、ネット上でたまたま嬉しい一言を目にしても一人で有頂天になっているだけでした。


が、
今回のさとなおさん、さなメモでの一言は嬉しいだけでなく、感服しました。(書いている今でもこうやって載せてしまうことに躊躇していますが)


「内省的&内面的で寡黙な料理。ひとつひとつの素材への真摯な目配りが随所に感じられる、余計なことをしない料理。こういうお料理をいただくと、饒舌でこねくり回す料理が本当に疎ましくなる」


内省的&内面的で寡黙な料理


ワンセンテンスで私が目標としたい料理を言い当ててしまわれました。今までどなたもこういう表現をされた方はいませんでした。でも私自身の仕事はこうありたいと願ってきました。さとなおさんとは言葉でそんなやりとりをしたことは一度もないのに、料理を召し上がって言い表す。恐いほどです。


さとなおさんとは1990年代半ば過ぎ、「ジバラン」を愛読し、メンバー皆さんの料理店への真摯な態度にうたれ、特に「日本料理への提言」にmailをお送りしたことからやりとりが始まったと記憶しています。ジバランの他のメンバーの方も店にお越しいただいてずばり的を射た言葉に脱帽したのですが、あの当時から皆さんの表現方法はそれぞれ変わっても料理店にむかう態度はいつも変わりませんでした。


本質を見抜いた鋭い言葉と提言、「もっと美味しいものを!」と料理店に求める姿勢はいつも私たちの襟を正してくださっています。


料理店とお客様のよき関係、稚拙な批評サイトではけっして築けない私たちの宝物です。でも基本的に「褒められて伸びるタイプ」なんですけどね、私。