四川の風


板前日記を更新する時間がとれなくて遅くなってしまったのですが、先週お昼に「招福楼」さんに伺ったあと、最終日にぎりぎり間に合った会田誠展をたっぷりと堪能し、夜は「飄香 - ピャオシャン」さんへ。


中華料理の信頼する職人さんに「東京の中華 今ならどこ?」とお尋ねした中に「飄香 - ピャオシャン」の名前がありました。


麻布十番に移転されてまだ半年も経っていないというこのお店のことは全く未知であったのですが、彼のお薦めであれば間違いないはず・・・という信頼感は最初の前菜で完璧に二重丸に肯定されました。


9種類の品々がどれもエッジがたって際立ち、どれ一つとして「どこかで食べたあれ」がないのです。事前の予約では「アラカルトで・・・」といってあったのを、直前に「おまかせコース」にしたのが正解でした。現れる品々は前菜のわくわく感をさらに増幅させるものばかりで、オリジナリティあふれつつ四川の伝統に裏付けされた確かな味わい。四川の辛さにも妥協が一切ありません。なにしろその日は肉料理が四品続いてもすべてが独創的で「肉ばかり」の印象が一切ないのです。


長い間、麻婆豆腐 海老チリ 担々麺から抜け出せない四川料理から、ステージが一つ上がっていることは中華料理素人の私にも理解できます。こういう四川料理人が現れているんだぁ。。。とうれしくなります。


サービス陣もつかず離れずスマートですし、飲み物のリストもとても充実しています。すべてに目が行き届いている店を経たった半年で創り上げるその能力の高さは尋常ではありません。


家族6人がとても満足して帰る際に、ご主人がご挨拶に出てくれそのとき初めて気づいたのですが、ここは「NHKの朝の番組でよく見るあの方」のお店であったのです。番組でその技術の高さと人柄の優しさは十分に存じ上げていたのです。紹介してくださった職人さんも「TVに出ている・・」とはおっしゃらないし、予約の際に拝見したホームページにもそれらしきことは全く書いていないし。。。まっ、これだけの実力があれば「TVに出てる」と売りにする必要な全くないのですね、きっと。私のような俗物が推察するに「TVに出ている」が有象無象を呼び込んでしまうマイナス要素になることは東京ではよくあることです。実際私自身が「TVに出ている」なんぞ関係なく最初から最後までを十分に堪能した後でその事実を知ったくらいなのですから。


いやぁ、四川料理がこんな進化をしているとは。お昼の招福楼さんとは全く別の感動を味わいました。すばらしいお店です。