隠れた小さな自慢


前回「お客様の情報があればあるほどきめ細かなサービスには有利」と言いました。


お得意様であればあるほど、通ってくださればくださるほど、お客様にとって心地いいおもてなしがどんなものであるかを知ることができるのです。


調理場では毎日こういう情報をスタッフと私でやりとりし共有化しています。


一見のお客様であれば、年齢性別、同席のお客様の情報、お料理の進み具合、客席内でのお話の盛り上がり具合、会話の細かな内容、好き嫌い、次に注文がありそうなお酒の種類、料理、お酒への興味の示し具合、などなどあらゆる情報が報告され共有化されることで、次に何をすべきかを判断しています。スタッフが私に指示してくれることも、私がスタッフに提案することも再三です。


それらはもちろんお客様には知られないところで話され、決して外に漏れることもないのですが、お客様が気づかないうちに心地いい流れが生まれていたとしたらそれらはこういう情報のやりとりが裏の方でなされているからなのです。そう、気づかないけど知らないうちに心地いいってのが料理屋にとって一番の正解です。


幸いなことに優秀なスタッフに恵まれていますので、毎日適切な情報が調理場内でやりとりされているのですが、さらに、お客様がお帰りになった後で、これらの情報、たえばご来店いただいたお客様個々にどの器でなんの料理をお出ししたのか、お酒は何をどの順番でお出ししたのか、分量はどれほどが適切であったか、気になった会話はどんなものであったのか、接待であれば、接待された先のお客様はどなたであったのか、その方の満足度はいかほどのものであったのか、次に注意すべき点はなにか。。。。などなど気づいたことをデータとして残す作業をしています。


ですから、次に同じお客様がお越しになった時にはそのデータを呼び出して(二回三回前まで) 献立やお酒が重ならないように、NG食材を出さないように、NG話題が出ないように・・・と予習ができるのです。


すべてのお客様のすべての献立とお酒のバックアップと小さな様々なデータの積み重ね、料理屋ならそれくらい当たり前と思うでしょうが、私的には、公表もされないし、存在もあきらかにはしないけれども、心の中の小さな自慢のひとつであって、店の財産でもあります。


私はそれらをPCでこなしているわけですが、スタッフの記憶力のほうが私のPCデータよりもさらに優れていて驚かされることがよくあります。つまりスタッフそのものが大きな財産ってことなんでしょうね。