老舗の行く末


市内のある老舗ホテルが会社更生法の適用を受けたそうです。


とはいっても、会社の権利が譲渡され営業は通常と変わらず行われているのですが、昔からなじみのあるホテルであるだけに会社更生法という事実はショックです。


実際には、それよりも以前に経営をしていた一族経営が行き詰って東京資本の大ホテルの傘下に収まり、それもうまくいかず今回の仕儀となった経緯がありました。この事件は地域を代表する大きな地元ホテルが不況の中で生き残ることの難しさを物語っています。


このホテルは前身が地元の超一流料亭で、私にとっては憧れの存在した。料理人にとって「料亭」という存在がなんといっても頂点に君臨していた時代です。


私の祖父はこの料亭が料理人の出発点でした。


大正初期、小学校に通いながら料亭で見習いとして働き始め、祖母との出会いもその料亭であったのです。ですからある意味私の店の原点が件の老舗ホテルの前身ある料亭なのです。


昭和に入ってこの料亭を経営し、ホテル事業を立ち上げた一族も祖父、父ともにお付き合いがあったわけですが、私などにしてみると一流料亭 大ホテルの経営者として雲の上の存在で、一生太刀打ちすることなどできない高みにいる方々思っていたのです。


その華やかな人々が行き詰り、さらに受けついだ東京資本も立ちいかなくなるという時代の厳しさ。「料亭」には遥かおよばない小さな料理屋が何とかヨタヨタと生き残り、憧れの存在が消滅する現実は、これからの料理店の見えない行く末を暗示しているようです。