涌きいずるクレーム


乙武洋匡と有名イタリアンレストランとの「車椅子で店に入る、入れない」のtwitterでのやりとりは、周りの評論したがりを巻き込んで燃えあがっていました。たまたまリアルタイムで乙武さんのtweetを見ていたものですから、「こりゃまずいなぁ」と他人事とは思えずに成り行きを見守っていたのです。


飲食店を営む人間として、フォロワー60万人を抱える発言者のクレームはハラハラします。実名を出されただけで私なら一週間は寝られないはずです。


クレーム自体はどちらが悪いとも私は言えませんし、どちらが真実を言っているかわからないので。。。というより、両方の言い分が表に出てしまった時点で料理店としてはアウトなんですね。


店とお客様のトラブルはどんな小さな店でも、どんな高級店でも必ずあります。どれほど注意し、スタッフとの連携に気をつかっていても悪魔のようにどこかに潜んでいるのです。


以前に勤務していた大型店での経験の長かったスタッフに言わせると、「親方の店はお客様のクレームがかなり少ない方だと思います」と言ってくれましたが、それでも数十年にわたって一件もないというわけではもちろんなくて、手痛い失敗を何度もしているのです。もちろんその度にリスクマネージメントを真剣に検討して、同じ間違いがないように配慮するわけですが、時間がたつと、「えーーー!こんなことでぇ!」というトラブルが起こってしまうのが料理業界なのです。


こういうトラブルはほとんど場合私の落ち度なわけですが、ごくまれに「そりゃぁないでしょう」という理不尽なケースがないわけではありません。そんな時にももちろんひたすらお詫びをするところから始まるわけですが、心の奥底で「この方の予約は未来永劫受けない」と心に誓うことがあります。私が店を受け継いでから20年で二件。そりゃ忘れもしません。でも表には表さずに死ぬまで私の心の中だけにしまって置くんですけどね。あっ、万が一電話があれば「当日はあいにく満席でしてぇ」ってお断りする程度の対応をするですが。