大切なお客様


接待で店を使ってくださるお客様は、よく「大切なお客様をお連れするのでよろしくね」と予約の時点でおっしゃいます。


もちろん私たちにとってはご来店くださるすべてのお客様にできうる最上のおもてなしを心がけていますから、「はい、かしこまりました」とだけ申し上げるわけですが、実際の話、「○○様だけを特別に」ということはほぼあり得ません。


経験上いえるのは、料理にしてもサービスにしても「○○様だけを特別に」・・・ってのには必ずほつれが生まれてしまうのです。




高名な料理人が見えるので特別な料理を・・・と気張ってしまうと、ほぼ99%の確率で空回りをしてしまってろくなことはありません。普段通りが一番いいのです。


社会的地位のある○○さんが来店されるので、特別に綿密なサービスを、とがんばりすぎるとサービスが過剰でうざったくなることもよくあります。いつものようにさりげなく、見えないところで心配りをすることに徹するのがやっぱり一番です。


TVで有名なあの方が見えるので・・・と、ちやほやする・・・なんて私ン処ではもちろんあり得ません。



ただ一ついえるのは、大切なお客様をお連れする前に、店にとってのお得意様になっておくことがとっても大事だということです。何度かお越しいただき、お客様の嗜好やお人柄を知り、情報をたっぷり持ていることはおもてなしに大切な要素になります。お得意様であればお連れする「大切なお客様」がどういう関係のお付き合いであるのか、出身がどちらで、年齢やお酒の嗜好、お人柄までおたずねすることが可能です。お客様の情報をすこしでもたくさん持っていることはきめ細かなサービスにとってとても有効です。


初めて使う店に「大切なお客様」をお連れするよりも、馴染みの店にお連れする方が間違いないことは誰が考えてもわかりますよね。


「大切なお客様」をお連れする前に、ご自身が店にとって「大切なお得意様」になっていることがとっても大事なのですね。