徒弟制度


さて、
料理の仕事を学ぶのには現場で時間をかける必要があるというお話を昨日しました。


では、学ぶためには徒弟制度が必要であるのか?さらにホリエモンさんが言うように「低賃金で労働力を確保するために仕事を効率的に教えない」のか?


徒弟制度といって思い浮かぶのは、ただ同然の安い賃金の丁稚奉公、身体を酷使する長時間労働、師匠先輩から浴びせられるパワーハラスメント、長い期間を経なければ伝授されない職人仕事


なんていうマイナス要素。昨日の記事で連想される老舗の徒弟制度も一般の方々はこんな風な日々を連想されるのではないでしょうか。


確かに私が修行した40年前にはこのくらいは当たり前でした。それを乗り越え技術を得たものが職人として認められるとも思っていました。



他店のことはよくわかりませんが、こと、私の店では前述で言うような徒弟制度は一切ないと思っています(スタッフは一部感じていたりして@汗)


給料は決して高くはありませんが、同年齢同学歴の方々から見てひどく見劣りがするとは思えません。私自身は同年齢同学年の三分の一でしたが、休日が少なく寮生活(ほぼタコ部屋)食費がかからない生活でしたから困窮はしませんでした。


労働時間は変則的であることを除けば苛烈では全くありません。私自身は修行時代、朝八時半から夜十一時まで(休憩時間2時間)働くのが通常でしたが、今は七時半から夜は十二時まで働きますから修行時代よりも労働時間は長かったりします。ただスタッフに同時間を働かせることはありません。


パワハラは私の店ではありえません。叱責したことも大きな声を出したことも一度もありません。私自身は1日に最低5回は「アホ」「ボケ」と怒鳴られるのは通常でしたが、私が本当にアホでボケであったのだと思います。ただ、当時もアホでボケなんだからそういうダメダメなやつにわかるように教えてくれればいいのに。。。と思っていました。


長期間の下積みをしなければ仕事を伝授しないようでは、私の店では効率が悪くて話になりません。昨日お話ししたように、多分私の最後の弟子となる女性には教えられることは(その技術水準であると判断すれば)全て教えています。秘伝や一子相伝は全くなく、多分調理学校よりも丁寧に綿密に全てを伝授しようとしています。その方が私自身の負担が少なくなるとわかっていますし、彼女もしっかりついてきてくれています。



私の店の勉強が職人仕事を学ぶために最上であるとは全く思ってはいませんが、私が修行時代に不条理で意味がないなと思ったことは受け継がない試行錯誤はしてきたつもりでいます。事実、現在の弟子は、調理師学校の研修で私の店で一ヶ月働き、就職は有名なリゾートホテルの調理場に入ったのですが、理想の仕事との大きなギャップや人間関係に大きく悩んで、私のところへ相談に来ました。研修で感じた私の店の仕事と人間関係は少なくとも彼女にはずっとマシに思えたのだと思います。


さて、そうやって料理を学んだ若者が成功者となれるのかどうか?そこんところが大きな問題です。厚切りさんホリエモンさんはこういう形の店や料理人の育成はどんな風に感じるでしょうね?


と、ご立派な御託を並べましたが、私の店は銀座久兵衛さんのような超高級店ではなく、全国の田舎町ならどこにでもあるような日本料理店ですからそこんところは大きく差っ引いて考えてくださいね。