職人に徒弟制度は必要か?


TV番組で職人の徒弟制度は必要か?というような番組があったそうです。


以下はネットの記事の抜粋ですので、この記事だけで要旨を判断するのは早急かもしれませんが。。。

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15日放送の「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)で、ビートたけしの意見に厚切りジェイソンが異論を唱えた。

番組では、短期間で技術を習得する寿司養成学校「東京すしアカデミー」と、修行を重んじる江戸前寿司店「銀座久兵衛」をVTRで比較し、職人の徒弟制度が必要か否かを討論した。

銀座久兵衛では修業年数で扱う魚介類が異なり、マグロに触れることが許されるのは、弟子入り8年目以上のベテランのみだという。一方の東京すしアカデミーでは入学してすぐに魚をさばけるなど、両者の違いが浮き彫りとなった。

VTR後、たけしは「『久兵衛』のオヤジが河岸(魚市場)を歩いたら後つけるやつがいる」と目利きの大事さを訴え、寿司を握る技術よりも前に板前としての知識や経験を得るのが重要だとし、徒弟制度を肯定した。

しかし厚切りは「それは自分のスキルを磨いておけば、のちにそういう立場になれることもある」と反論した。

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少し前にはホリエモンtwitterにも


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「今時、イケてる寿司屋はそんな悠長な修行しねーよ。センスの方が大事」


「そんな事覚えんのに何年もかかる奴が馬鹿って事だよボケ」


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tweetしたのだそうです。



料理人の目から見ると、すしアカデミーで学んだ数ヶ月の仕事と、高級寿司店の仕事を比べるのは無謀としか言いようがありません。


すしアカデミーがいかに充実した授業内容であっても、映像を見る限り寿司のできあがりは、寿司らしきものでしかありませんし、そのまま商売としてお客様にお出しできるレベルではありません。


厚切りさんやホリエモンさんがいうように、netでも勉強できるし、センスの問題の方が大切というのは話題性という意味では面白いかもしれませんが、高級店を知るご本人達が本気で言っているとは思えません。




さて、
料理について、職人の徒弟制度や長い間の修行が必要かどうか? それはnetや学校の授業で学べるかどうか?


私の実体験から申し上げれば、技術を身につけるための時間が、前述の高級寿司店のように長い時間であるべきかかどうかはさておき、職人としてお金を取れる仕事を身につけるのにnetの情報や学校の情報では全く追いつかないのは事実です。


また、センスを身につけるためのノウハウはファインアートやファッションがそうであるように、高度なセンスを一定のカリキュラムで簡単に身につけられるものではありません。万人に一人が突出することはあってもnetや学校でセンスを磨いた例を私は見たことがありません。


料理の技術だけについて言えば、ひたすら繰り返すことで身につけることができます。基礎的な仕事を繰り返し繰り返し、さらに自分を見つめて繰り返すことしか道はありません。


学校で習ったりnetで見たことを再現するのはある程度のレベルでならできるでしょうが、職人仕事はその遙か上を言っているのが真実です。仕事としての料理はそういうものです。



そして高いレベルの仕事を繰り返し学べる場所は何を置いても志の高い高級店しかありません。もしくは、早くから自身の店を持ってお客様を相手に繰り返すしか仕事を覚える方法はないのです。



とはいっても、高級店で長い時間の修行を経た人間全員が、修行したのと同じレベルの店を立ち上げ維持することができるのか?といえば、これもホンの数パーセントの卒業生のみが同じ志を再現できるだけというのが実情です。


料理の技術を身につけているというのは、店を立ち上げるために必要な60%くらいの要因でしかないのです。


蕎麦好きが高じて蕎麦打ち技術を身につけたオジサンが経営する店で、五年も維持できないのを何度も見ているのはまさにそんなケースです。


私の店で今勉強している若い子は三年目ですが、すでに一般的な料理人の六年目くらいの仕事をさせ(少なくとも私は徒弟制度的に振る舞ってはいないつもりで接しています)、十分にそれに応えてくれています。だからといって、彼女が十年目に私と同じ仕事ができているかと言えば、それほど日本料理の仕事は甘くはありません。


私など、彼女の比べると本当にボンクラなので、料理で身を立てられるかもしれないと思ったのは仕事を始めて20年目くらい。


どんなお客様が見えても物怖じせずに自分の仕事だけをすればいいのだ。。。と思えるようになったのは30年目くらいのことです。(つまりホリエモンさんからみれば大バカモンってことですね)


ですから、経験10年以下で店を立ち上げる若者は尊敬のまなざしで見ざるをえません。


少なくとも私にとっては料理はそんな仕事です。