新星現わる
飽き足らなかった日本酒に光が差し、「こんなお酒があるんならこの分野ももっと掘り下げていきたい」と目覚めたのが1982年前後。
大手酒造メーカーとの決別したのはこの出会いがあったからです。
それ以降何度も「おお!」と目をみはるお酒に出会てきたのですが、エポックと言える日本酒はある程度限られています。
たとえば1985年くらいに出会った黒龍「石田屋」「仁左衛門」
1993-4年前後の十四代
2005年くらいの村祐
この四本は何かの発展系とか、○○をよりきれいにした感じ、○○に何かを加えた感じという風に基盤となる銘酒に似ているお酒ではなく、現れたその当時比べるものがない圧倒的な存在感がありました。
「ああ、新しい時代が開けたのかも」とまばゆい光を見たのです。
同じ経験を久しぶりにしました。
秋田「新政」 「亜麻猫」「茜孔雀」
「な、なんだ!これ!!」
という驚き。
この一年ほど噂は聞いていたのですが、目の前に、ではなくて、舌の上にのせてみたときの衝撃は昭和50年代に普通酒から一気に菊姫大吟醸を知ったときの驚きに近いものがありました。
何も言わずに夕食時に連れ合いに出したところ、しばらくの間ワインのおもしろいヤツと思い込んでいました。それなりに私同様いいお酒を経験しているはずなのですが。。。
新政が1800年代から続く伝統蔵、6号酵母の発祥の地という基礎知識はありつつ、伝聞ですが、東大を中退してライターをやっていたとか、杜氏、蔵人を一新して新しい試みを続けているとか、下田で磯自慢に出会って酒造りを目指したとか。。。。本当かどうか確認できないミーハーな情報も含めて興味津々です。
しかもいただいた「亜麻猫」「茜孔雀」はウイスキー樽程度の大きさの樽に少量しか作らなかったようで、この二本で蔵の全容を把握したとはとてもいえないようなのです。
新しい時代の幕開けを間違いなく予感させる新政、じっくりと追いかけていきたい蔵が現れてワクワクします。
前回お話しした小田朋美と同様、他に比べるべきものがない唯一無二のお酒を若い作り手が世の中に出し始めたことが偉大です。