大量の仕込


日本料理の仕込には、限られた時期にしか手に入らない食材を大量に仕込むケースがあります。


たとえばお寿司屋さんでも「ガリ」(新生姜の甘酢漬け)をこの時期に1年分仕込む方がいます。ガリに使う新生姜は初夏のこの時期が旬ですので、今しか仕込めないのですね。手に入る時期にたくさん仕入れて甘酢に漬けて冷凍したり、パックにしたりするわけで、1年分を今仕込むという職人さんはとてもまじめな仕事人といえるのでしょうね。99%のお寿司屋さんが市販のガリを使うのが当たり前ですから、志があって労力をいとわない心持ちを維持しなければできないことなのでしょう。


私の仕事は志が高いなんていう立派なものではなくて、時期が来たからやらなきゃね・・・という程度のお話。


まずは実山椒。



一瞬で終わってしまう食材ですので、入荷したら即手に入れて1年分を仕込んでおきます。茹でて晒し、実を枝からはずして冷凍保存します。


お弁当のご飯に使うちりめん山椒や昆布山椒、山椒味噌などなど一年を通じて各所で使っていきます。


リニューアル後、スタッフの数が少なくなりましたので、実をはずす作業を仕事の合間にかたづけていっても約三日。じっと細かい手作業を続けていきます。


1年分ではないのですが、じっと続ける手作業というと、この時期の青梅も同様です。


今年もわずかに入荷した紀州 古城梅。(こしろ)


割り箸に縫い針を巻き付けて(デンタルフロスが丈夫で都合がいいです)、この針で梅ひとつひとつに針を当てていきます。



この作業をしないと茹でたときに皮がはぜてしまいます。じっと細かい手仕事ながらたった10kgですから二人で二時間ほど、肩だけがこります。


瓶詰めでも売っているらしいのですが、この方が美味しいですから、手間を惜しめませんよね。