枯れたワインの難しさ


今現在ですと、普通の酒屋さんでは若いワインが陳列棚に並ぶことがほとんどです。1995年あたりのワインブーム以前にはワイン屋さんに熟成感のあるワインがそれなりに売られていたのですが、今では飲み頃のいい熟成のワインは値段もそれなりでデイリーには手に入れにくくなっています。


増してや熟成の進んだ枯れたワインはワイン屋さんも敬遠しがちです。理解が難しいからなんでしょうね。


熟成の進んだワイン、もっといえばピークを少しすぎた枯れたワインは日本人が特に好きだと言われていたりもするようです。実際私も大好きです。ただし、普段から若いワインしか飲んだことがない方にはその味わいを楽しむには少々ハードルが高いかもしれません。


あるソムリエさんは、「こんな腐ったようなワインを出した!」と酔いもあったゆえか、若い女性客にその熟成感たっぷりのワインを浴びせかけられたと、苦い思い出を語ってくださった方がいます。「ホントにいい熟成感があって素敵なワインだったんですけどねぇ。。。」と振り返ってお話をしてくださいました。


私もお客様がブルゴーニュワイン好きと伺ってお出しした熟成の進んだワインを全く評価していただけなかったことが何度かあります。「えーーー!この美味しさを理解していただけないなんて。。。」と心の奥で思いつつ、わかぁぁい(私に言わせればまだ全く開いていないガチガチの)ワインで満足していただくと、見抜けなかった自分の力不足を嘆くばかりでした。


シモン・ビーズのサビニー・レ・ボーヌ ブルジョ1998 ヴィンテージの割に熟成が進んで、枯れた味わい、雨上がりのぬれた枯れ葉のような香りとしっとり落ち着いたタンニンが特徴の大好きなワインですが、「若い子好き」には理解できない大人な魅力をたたえたワインなんであります。



一度でも理解していただけない方に出会ってしまうと、どんなに好きなワインでもお客様にお出しするのをためらってしまうものなのです。自分の舌に自信を持っていたってお足を頂戴するお客様が理解していただけるかどうかは別の問題・・・となると、ためらいは嵩じてしまってここ3-4年ほどもこのワインはセラーに寝かせたままでした。


本日のお客様は。。。。きっとわかってくださるに違いない。。。。と数年ぶりに出してみて、大絶賛。ほっ。


本当にいいワインなんです、これ。