コネ入社


岩波書店のコネ入社が話題になっています。


コネ入社 つまり縁故採用ってことですよね。


その昔、私たちの板前世界では、んなの当たり前でした。というかそれしかありませんでした。


私の店では25年くらい前まで、学校をでて板前になりたいといって門をたたく若者は、すべて誰かしらの紹介でやってきました。筋のしっかりした紹介者がいないケースはほぼなし。お得意様からの紹介、店の出身者(卒業生)からの紹介が主です。


実際私も大阪での修業先は祖父の兄弟子の紹介で店を見つけてもらいました。


考えてみると、その時代までは三年未満でやめてしまう弟子は極めて少なかったのに対して、縁故採用がなくなり調理師学校ほかからやってくるケースが増えだしてからというもの、三年以上続くこと自体がまれになってきていたのです。もちろん若者の気質、世間の風潮の変動もあるのでしょうが、紹介者を経た修行の場合、紹介者の顔をつぶせないといういい意味でのプレッシャーも働いていたのではないかと思います。


いずれにしても縁故採用がなくなったのと、地域コミュニティーが喪失された世の中の変化は間違いなくリンクしていて、日本人の人間関係が希薄になったことが就職状況、修行事情にも大きく影響しているのでしょうね。


私がリニューアルで弟子を取るのをやめたのも、かっこうよくいえばこれらの人間関係の喪失感によるものなのかもしれません。


縁故によって若者と彼が育ってきた家庭状況を保証してもらうこと、それってものすごく大事なことのはずで、入社試験では判定できな担保を得ていることのはずなんですが。