お掃除お掃除


休日をほぼ丸一日使って調理場の掃除をしていました。


根っからの掃除好きでは全くない私ですので、せめて仕事上だけは無理矢理にでも掃除を自分に課さなくて調理場は汚れる一方になってしまいます。


調理場の掃除で大切なのは、「仕事をしたらすぐにそのまわりを拭き取る」「汚れやすいものにふたをしない」の二つです。


修業時代に先輩にたたき込まれた「仕事をしたらすぐにそのまわりを拭き取る」仕事のできる職人はすべからくこれが身についているものです。「忙しいから後でまとめて」と思ったそのときから堕落は始まってしまいます。不思議なことに最初の三年でこれが身についていない職人は生涯汚れが気にならない料理人、つまり仕事が綿密でない職人になってしまうのです。自分自身の経験からも、これまでたくさんの若者を使ってきた経験からも例外のない事実です。


ただ、私はこれを修行している若いモンに教えるのがとても下手くそだったのですね。最初に教えてできなければ(90%がそうですが)口を酸っぱくして繰り返しおこりながらでも教えればいいのに、この「口を酸っぱくして」ができないんですね。ですから、若いモンを使っていた時代よりも今の調理場の方が綺麗に保たれいるというなさけなさ。自分でやるほうが気分が楽ちんなんですよね。指導者失格です。


「汚れやすいものにふたをしない」の一番いい例が油まわりです。揚げ物の器具を置く周辺は常に拭き取っていても油汚れが必ずついてしまいます。よくグルメ番組で現れる調理場風景をみると、汚れる場所にアルミホイルを貼っているところがありますよね。あれが一番の大敵なのです。毎日アルミホイルを替えるならともかく、アルミホイルを張るようになると「汚れたら取り替えればいいや」と、しばらく放ってしまうのです。一番汚れるところほど、素のままで見えるようにして「汚れたら拭き取る」を繰り返すのが一番なのです。汚れを隠してはいけません。コンロまわりも同様です。ここが汚れている料理人に仕事ができる人はほぼいないと言っていいでしょう。これも若いモンを使っている時代よりも、今の私の方がまったく綺麗です。そこン処がなさけない。



休日に掃除していたのはダクトでした。もちろんダクトも週に一回はすべてのフィルター部分をクリーンアップしているのですが、二ヶ月三ヶ月するうちに細かな汚れが必ずついてきます。その辺を丁寧に掃除していたらそれだけでほぼ丸一日。仕事のできる料理人はまとめてこんな時間をとらなくてもずっと綺麗にしているんですけどね。


料理研究家の有元葉子さんの仕事のほぼ半分は掃除であると聞いたことがあります。アシスタントの仕事もそれに費やされることが多いのだそうです。現場で仕事をしている料理人も目指さなくてはいけませんね。