師匠のご来店


初めて料理人(追廻ですが)として第一歩を歩み始めた時の最初の師匠が来店されました。


私にとっては一生頭が上がらない方です。


もうどんな著名な方の来店よりもドキドキ。


なにしろ右も左もわからないよちよち歩きを指導してくださった方です。私の職人としての骨格は間違いなくこの師匠のおかげで形作られました。


その後自分に様々な弟子ができてみて、修行最初の三年の重要さも身にしみてわかりました。あの最初の数年が間違っていたら今の私はありませんでした。


「アホッ!」「ボケッ!!」と何度も怒鳴られたにもかかわらず、この方に怒られたことの恨みは一切ありませんでした。「いやぁ、あのころの私が一番厳しかった頃かもしれんなぁ」と笑っておっしゃいます。


料理を召し上がりつつ、「美味いわぁ」「彩りもええなぁ」「言うことないわぁ」とお世辞50%ととしても身に余るお言葉をいただきつつも、「こうやって30数年この仕事を続けられているのは間違いなく”おやっさん”のおかげです」と申し上げなくはいけません。


後でサービススタッフ曰く「親方のお座敷での背筋の伸び方、尋常じゃぁなかったですよぉ」と。