職人仕事


昨日の蕎麦屋さんの仕事が職人らしくないと書いたのはなぜだったんだろ?としばし考えてみました。


主婦の料理と職人の料理の違い・・・こと、私のケースで考えると、お客様を前にしたときの一番の違いは、ひたすら料理を出すタイミングであるような気がしてきました。


たとえば二人連れのお客様がご来店されたときに、二人の料理が同じタイミングでスムースに、お客様がスムースであることに気づかないほど心地よい流れができることがとても大切です。そこでは料理が美味しいことはまず当たり前でなければなりません。美味しく料理ができたとしても美味しく感じられるタイミングでお客様に提供されなければ意味がないのです。



一組のコース料理を出し始めるとき、先付け 前菜の類を出した時に、お酒を飲むペースと料理を食べるペースをサービスに確認しながら、その後の料理の段取りにかかり始めます。前菜類を食べ終わってちょっと間をあけたタイミングでお椀を出すためには、(今の献立なら)いつ聖護院大根を暖め始めるのか、雲子に火をいれるタイミングは?出汁仕上げる時間は?お椀に三種類の要素があるのであれば、それらがお椀の中に盛られる一瞬のタイミングにあわせて秒単位で鍋に向かいます。


そうしているうちに、四皿後の焼き物のための炭を熾して、焼き物を仕上げる時間に炭の状態が一番よくなるタイミングを狙い、蒸し器の湯気が蒸し物を蒸し始めるときに一番いい状態になるように算段を重ね、料理の進み具合を読みながらいつ最後のご飯を炊くべきかを考えます。お客様の座の盛り上がり方、召し上がり具合、お酒の進み具合がサービス陣から伝えられ、それらを読みながら、続く料理を何分後に仕上げるべきか、そのためには調理器具をどのような状態にし、食材をどう扱っておくか、一皿の段取りと、コース全体の全体の段取りを頭で計算しつつ仕事を進めます。それらがトータルでできるのが職人の仕事であると思うのです。


一皿の単位でそういったタイミングが見事で、私が見惚れていたのが「とんかつ やまいち」のご主人の仕事でした。昨日の蕎麦屋さんと同じくカウンターからをすべてがみえるのですが、仕事っプリが見事の一言です。注文が入って豚肉を切り、塩コショウ、衣とパン粉を付けて揚げ、揚がるタイミングを見計らって赤だしとご飯、キャベツ・・・と一皿を仕上げるのはどの店でも同様なのですが、その流れが肌に染み付いた職人仕事でよどみなく、計算されつくしているのですね。


あれ、見習いたいなぁ。