鱧の出汁


鱧は梅雨の雨をすって美味しくなるといわれています。今が旬です。


魚の骨は美味しい出汁がでるものなのですが、鱧から出る出汁は中でも上品さでは右に出るものがありません。


お椀に使う牡丹鱧は、本葛を刷毛で打ったあと昆布だしの中で火を通します。鱧の味わいが出た残った昆布出汁がもう抜群に美味しいのです。牡丹鱧のお椀には鰹昆布出汁にこの残り汁を加えてあげるとお椀の吸い出汁に奥深さがでます。さらにこの鱧昆布だしを冷まし、鱧の尻尾に近い部分を使って鱧ご飯も美味しい。ご飯に鱧の味わいが移ってほんのりしたご飯になります。


残った鱧の骨は、炭の残り火でこんがり焼いて、赤だしの出汁の中に加えます。鰹と昆布の出汁、いりこ、鱧の骨。普段ですと日本料理の出汁の味わいはシンプルゆえよさと思っているのですが、この四種類が渾然となった出汁ですと手ごわい八丁味噌もおとなしく味わい深くなってくれるような気がします。