モテタイ男子


昨日お話した川上健一さんの「翼はいつまでも」 思春期をむかえた男子の、もてたく仕方のないうずくような心情は、すべての男たちに経験があります。10代から20代にかけて、女の子に興味のない男子なんぞいるはずもなく、日常もそのことで頭がパンパンになるほど女の子が気になるものです。


人気のスポーツや音楽に取り組むのも、「もてたいから」の一字につきるといわれますが、私の場合偏屈なのか、ジャズにのめりこんだのは「もてたい」は微塵もありませんでした。当時はもてたければ選ぶのはフォークかロックと定番は決まっていて、女の子の前でギターなんぞ弾いて気を引くことを夢見たもので、ただでさえ一般には難しそうな(60-70年代は特に)ジャズに女の子が興味をもつのは絶望的でした。


ところが、所属したバンドがそれなりのレベルにあったせいか、レギュラーメンバーにはたまに追っかけのような存在がいることを知り、「おお、ジャズもいけるじゃん」とほくそ笑んだのです。特にコンサートマスターを含む一部のメンバーは、女子大のバンドに指導に行くという、音楽にひたすら従順であった私にはパンパンの頭がはちきれそうなくらいうらやましい仕事がありました。しかも、同じパートの先輩は、どちらかというとダサい部類の見た目にもかかわらず、指導に行く女子大バンドの超美人がガールフレンドというさらに妄想をふくらませるような現実がありました。


そんなとき「一回ベースをみてやってくれない」というコンマスの誘いがあって、心はウキウキ、なにしろ普段は99%が男子学生の学部、99.5%が男子のバンドの日常に「じょ、じょしだい」ですからそりゃぁ「もてたい印」はマックスに膨れ上がります。


ところが、実際にあこがれの女子大バンド指導はあくまで指導に徹していて、一回こっきりの訪問で「うれしはずかし出会い」なんぞありませんでした。というか、モテナイヤツはどこへいってもなにをやってもモテナイ現実がより明らかになっただけなのでした。ださく見える先輩にはきっと女性を惹きつける魅力があったからこそ素敵なガールフレンドができたんでしょうね。