新年


あけましておめでとうございます。


本年も相変わらず店、板前日記のご愛顧のほどよろしくお願いいたします。



10年もサイト上で日記を書き続けていると、忘れてしまっている自身の心持の変化を日記を遡ることで確かめることができます。この10年間は店を新築し料理も自分なりに進化をさせていく右肩上がりの10年であったように見て取れます。


私にとって課題は40代から50代初めにかけての料理人としては一般的に脂ののる時期から次のステップへの移行でした。よく日記の話題にもしてきたことですが、周りの先輩料理人たちが自分では気づかないうちに守りの体制に入っていくのか、よく言えば伝統的な、悪く言えば手垢のついた料理になっていくことへの危惧が頭から離れませんでした。どうやっても避けられない年齢を経てしぼんでいく自分をどこまで客観的に見つめ自己修正していけるのか。これからはそれが最大の課題です。


周りの同級生達の口から定年後の話が出るのを聞いて唖然とし始めた最近、定年のない職業を選べたとはいえ、悪い意味で年齢を感じさせてしまう料理店を営んでいるようでは店を閉めなくてはなりません。若いときのように何にも考えなくても、常に前に突き進んでいるようなわけにはいかなくなるはずなのです。


料理人になって三十年、これまでおおよそ10年の周期で変化が訪れてきました。料理人としての土台を築くことにあせっていた最初の十年。父の作り上げたものに反発しつつ自分の料理を見つけ出そうとあがいた次の十年。「これで自分の進む道は間違いないのだ」と確信らしきものを得て発展させようとした今の十年。


次の十年は発展させるための身につけてしまった余分なものをそぎ落としてスリムにし、本当にやりたい仕事だけを残していけるための努力をする十年でありたいと思います。


昨年夏くらいから具体的な行動として店の仕事をスリムにしていくための準備をしてきました。そこに秋のリーマンショック。具体的行動が少し先延ばしになるかもしれませんが、思い描いている姿は変わりません。


店を訪れてくださったお客様が安心して料理をめしあがってくださる安定感と、いつもなにか発展しているかもしれないというワクワク感、この二つだけは引退宣言のときまで相変わらず感じていただけるように努力していきます。今年はそのためにも大切な一年になるはずです。どうぞ温かく見守ってやってください。