器さらに

clementia2008-09-05



黄瀬戸を使うことは料理屋にとってひとつのハードルを越えることのように思っていました。黄瀬戸がコースの中で現れるのは料理屋の格をひとつ上げてくれるのです。


焼いてくださったのは林和一さん。


アトリエにうかがってイメージをお伝えするだけで、店のこともよくわかってくださっている和一さんは注文を快諾してくださいました。タンパンに油揚げ手、黄瀬戸に必要な要因をすべて含んだ上で料理が盛り映えする大きさと立ちの絶妙さ。何にでも使いたくなる器に仕上がっています。こういう器には大葉や菊の葉のような妙な会敷が必要ありません。魚の焼き物のようにくすんだ彩りでも器が料理を映えさせてくれるのです。



黄瀬戸が本来の姿で全盛を迎えたのは、利休茶華やかなりし桃山時代荒川豊蔵が発掘したように美濃で焼かれ、豪胆で繊細な名作が当時の名もなき陶工たちによって焼かれました。この時代の器は一瞬の奇跡のように見るものを惹きつけるのです。