記録された献立


店では「○月○日 △□様 献立」という風にすべてのお客様の献立と器、飲まれたお酒が記録されています。次回お越しいただくときには必ず前回前々回くらいまでは献立とお酒を確認し、できるだけ料理とお酒が重複しないようにしています。


まっ、小さな店だからできる小さな努力の一つではあります。




こうやって献立を書き残すことはこの道に入ったと同時に始まりました。右も左もわからないボンチャン当時、調理長の立てる献立はすべてが完璧で比類なきものに見え、この記録を残すことはその後の自分にとって大きな糧になるに違いないと確信していたのでした。


それに比べ、今の若いものは献立を書き写すことなど全くしません。


・・・・と、「近頃の若いモンは・・」ちというつもりなど全くなくて、実は私自身が献立を自ら立てるようになっても、昔書き溜めた膨大な記録を顧みることが全くなかったのです。今の若いモンこそが「正解」であると言わざるをえません。というか、私の力不足だけが理由なのかもしれませんが。



伝統的といわれる日本料理の真っ只中にいても食材は常に変化し、料理方法も流行も激しく変動し続けているのです。もし今、30年前の献立をそのまま再現してもお客様の納得は99%得られないに違いありません。


あの地道な努力はなんだったんでしょう。と、悲嘆しても仕方ありません。ひるがえって、同じように日々続けているこの日記にしたって過去を顧みることは赤面しか残らないのですからねぇ。続けてきたと言う小さな小さな自己満足だけのためなんでしょうね、私の記録。