私だけの名盤


これまで名盤シリーズで紹介してきたアルバムは、そのほとんどが長く語り継がれ、数十年にわたって販売され続けてきたものばかりです。おそらくジャズファンの90%が「名盤である」と同意してくれるはず。


なのですが、隠れた名盤・・・というか、あまり話題になっていなくても、「私だけの名盤」というアルバムもあります。


二〜三ヶ月ほどまえにFMで一曲だけ聴いて「おっ!」と即購入したエミリー・クレア・バーロウ「ライク・ア・ラヴァー」






全く未知のジャズヴォーカリストでした。それもそのはず、日本でのデビュー・アルバムなのだそうです。たぶん、そこそこのジャズ通でも「ああ、あの・・・」と知っている歌手ではありません。


ところがなんでこのアルバムがもっと話題にならないのだろう?と思うほど素晴らしい。


ジャズファンの悪いところなのですが、新しく聴くミュージシャンが出てくると、まず「上手いかどうか」「テクニックがあるかどうか」を最初の基準にしてしまうところがあります。雰囲気はあっても下手くそでは認めたがらないのです。


エミリー・クレア・バーロウは決してテクニックが前面に出た歌い手ではありません。もちろん聴く耳を持った方が聴けばその実力の安定感も確かなものであるのですが、最初に感じるのは彼女の歌声の可愛らしさ。引き込まれる声質をもっています。回りを固めるサイドメンたちも日本では知られないミュージシャンばかりでも「彼らのライブはきっとスッゴイだろうな」と実感できるテクをもっています。アルバム創りがこれ見よがしでなく常に耳に心地いいのに、聴き込めば聴き応え抜群。何度聴いても飽きることがありません。


きっと10年後もCD棚の取り出しやすい場所に鎮座しているに違いないアルバムです。