20万件の廃業


日本中の飲食店の数は80万軒とも100万軒とも言われます。その中で毎年20万件が廃業し、20万件が開店するのだそうです。


全体の20-25%が毎年入れ替わるというのはちょっと異常です。確かに周辺を見ても5年続く店がいかに少ないか。


新たに飲食に参入しようという人たちは食べ物商売を軽く見ているのかもしれません。少ない人数でこじんまり始めようと思えば、朝から晩まで働いてもちっとも利益は出ないし、人を使えば人件費にきゅうきゅうとし移り気な従業員に振り回されることに悩みます。素人でも簡単にできる形態を選べば世の中の移り変わりが速くてあっという間に置いて行かれ、技術を必要と知る業態を選べば修行にあまりにも時間がかかる。素人だからとフランチャイズを選べば儲かるのは本部だけだとすぐわかるようになり、自分で一から始めるとなればその難しさに唖然とする。


私が若い頃までの飲食店は、真面目に一店舗だけで取り組み、地元に根付いた商売に心がければ、家族がなんとか食べていくくらいは稼ぐことができる商売でした。ですから自分の息子に受け継がせることも容易に考えやすくもあったように思います。


しかしながら今の飲食業界を見渡すと、子供たちに受け継ぐための強い意志がなければとても「やって欲しい」と奨められる商売ではなくなってしまっています。好きでなくても食べるのには困らない商売ではなくて、好きな上に様々困難を乗り越える志がなければ続かないのです。


東京で人気の高いメディア露出の多い店などは、大衆店も高級店も大手の傘下に入って次々と変化に対応できなければ生き残っていけません。その波はいずれ地方にも波及するに違いないのです。


「こだわり」のてんこ盛りがなくても真面目に働くとうちゃんと、愛想だけが取り柄のかあちゃんの居心地のいい料理屋は、日本から消えてなくなる日がいつかやってくるのでしょうか。