弁いちのラーメン


お座敷の予約が静かだった今日、お得意様にお出ししたのは私が付っきりで料理できる「庄内豚のしゃぶしゃぶ」


庄内豚のばら肉を薄くスライスしたものを利尻昆布でとった出汁の中でシャブシャブ、軟白葱と京都産の春菊も添えて、ポン酢と伊豆大島産の塩を入れたヴァージンオイルで召し上がっていただきます。庄内豚の脂身は脂っこくなく上品な香りでいくらでも食べられます。


豚の素性がいいとばら肉でもあくは全く出てきません。残った出し汁には昆布の旨みと豚の旨みがたっぷりです。


「ナンプラーの風味でおうどんをご用意しようと思ったんですが、ラーメンってのも美味しいですよ」と私。日本料理店でラーメンなんてあり?とは思いつつも口から出てしまったものは仕方ありません。案の定お客様は飛びつきました。


「弁いちのラーメンなんてめったにお目にかかれないもんねぇ、是非ラーメンで」


ということで、塩と胡椒だけで味をとったスープにちょっと硬めにゆでたラーメンを入れ、四時間蒸した豚バラ肉も分厚く切って葱をたっぷりと。シンプルな塩ラーメンです。


ゲンコツも鶏がらも数種類の昆布もダブルスープも秘伝のなんとやらもなぁぁんにもない、いい利尻昆布と銘柄豚ばら肉から出た旨みだけのスープなのですが充分に美味しいのです。複雑に様々なものを加え、時間をむやみに長くかけた複雑なスープだけがラーメンの正しいあり方ではありません。こういうのものありです。というより、いかにも私っぽいラーメン、好評でした。