地産地消


巷では地産地消(チサンチショウ)が高らかにうたわれています。地産地消とは地元で生産されたものを地元で消費すること。消費者の農産物に対する安全・安心志向の高まりや生産者の販売の多様化の取組が進む中で、消費者と生産者を結び付ける期待の高まりがお題目とされているのだそうです。


私が料理の道に入った頃には地産地消はあえて叫ばなくても当たり前のこと、流通的にも保存の技術的にも遠くのものを手に入れたり、冷凍冷蔵して保存することは難しい時代でしたから地元のものしか使えなかったのです。


先日イタリアンのシェフと話をしているときのことです。「イタリア修行時代、白トリュフなんてピエモンテまで行かなければ食べられませんでした。イタリアでは高級な食材を他の地から手に入れるということは基本的にありませんね。地元の食材だけを使うのが当たり前でした」と。


こういうお話を伺うにつけ日本の事情が特殊なのかもしれないという思いが浮かびます。


今店で使っている食材も広範囲です。


黒皮茸(富士山麓)柿(地元)三つ葉(茨城)黒豆枝豆(丹波篠山)松茸(丹波)鱧(地元)巻海老(地元)はと(茨城)赤むつ(三河)そば粉(北海道)百合根(北海道)鰆(三浦半島松輪)ししゃも(北海道)赤蕪(京都)石榴(イラン)湯葉修善寺)銀杏(清水)かます御前崎)平目(地元)里芋(大野上庄)


地元だから美味しいはありえませんし、地元だから新鮮もありえません。地元だから生産者の顔が見えるのではなくて、全国どこでも生産者を知ることはできます。


昨日のシシャモ同様、地産地消だけでは料理店を維持していくことができない時代になっているのです。