焼き松茸


「料理屋の土瓶蒸しに入っていた松茸がマッチ棒サイズであった」などと嘆く方がいらっしゃいます。松茸の値段を考えればさもありなんと思うわけですが、土瓶蒸しならまだしも焼き松茸となるとマッチ棒サイズに切った松茸では、焼き上がりにはなくなってしまいます。


毎年この時期に「松茸をワインと!」と注文をいただくお得意様に、昨日例の1kg十数万円松茸で焼き松茸をさせていただきました。値段のことばかりをいうのは野暮ですが、根が貧乏性の私には原価1本一万数千円の松茸を焼かせていただくのは一年にそうたくさんある経験ではありません。備長炭をおこしてカウンター席で松茸を焼き始めると香りが部屋中に充満します。食べるのは一口ですが焼き松茸は焼き始めからその後もずーーーと残る香りがご馳走です。「この残り香だけでお酒飲めますね」とお客様がおっしゃるほど素晴らしい香りがその日一日カウンター席には残っていました。「香り松茸」が実感できる料理です。