在庫


飲食店の強みというのは「在庫を置かなくていい」ことなのだといわれてきました。食材はもちろんお酒も、その日のうち、もしくくは一〜二週間の間に使い切ってこそ鮮度も保たれます。できることなら一日が終ると冷蔵庫の中が空っぽというのが理想的です。


経理上も在庫がないことはとてもありがたいことのはずですが、残念なことにこの十〜二十年ワインやら熟成させる日本酒、寝かせてナンボの焼酎、一年に一回しか手に入らない日本酒などというものに手を出してしまったせいか、在庫を常に抱えている状態が当たり前になってしまいました。


日本酒を近所の酒屋さんで一般の方と同じレベルで手に入れていては、「ああ、○○ね。×△酒店で□○円で売ってるやつ」・・・と、お客様にお見通しではプロとしてはちょっとお恥ずかしいですから(最近の素人はプロ以上というツワモノも多いです)、県外の酒屋さんからも年に数回まとめて入手するお酒もたくさんあります(その方が多いかも)


ワインはマニア度がさらに高い飲物で、「シャトー○×1982の市場価格は○□△円」が頭に叩き込まれている素人はごまんといます。さらにnet社会が加速するにつれて「稀少な○○」「入手困難な○○」もお金さえ出せばクリック一発で手に入ってしまうのです。全く半端なプロフェッショナルは行き場がないほど情報過多の時代に、「あの店だからこそ楽しめる○○」を常にもっていなければお客様の満足度を高めることは出来ません。


などと、コアなファンを楽しませることが目的ではなく、ワインは適正な価格適正なルートで手に入るとき(なかなかありません)に入手して、適正な熟成を経てからお出しするのが当然の飲物ですから、一週間前にあのお客様のために買っておいたシロモンを右から左へ出すことはほぼありえません。


というわけで(前フリが長い)、昨日一昨日とたな卸しのための在庫確認をしていました。ワインセラーに入りっぱなしで半日、在庫の本数を確認するだけでなく、飲み頃を迎えたであろうワインを手前に出し、買ったまま山積みになっていた熟成すべきワインを奥にしまいという作業をずっとしていました。調理場は暑い中、ひんやりしたセラーであれこれ考えながら作業する時間は結構楽しかったりして。とはいえ、在庫は在庫なのよね、経理的には。