顔を見ろ


昨日、お店とお客様の関係で料理人のモジュベーションに違いが出ることを書きました。


さらにもうひとつ、料理人はお客様の顔を直接見ているかどうかで、料理に対するモジュベーションが変わってくることも付け加えなければなりません。もしかすると私だけかもしれませんが、お客様の食べる姿を見ること、もしくは食べ終わった顔を見ることで緊張感はずいぶんと違います。


カウンター形式のお店であればお客様の食べる姿はいやでも目に入りますが、調理場にこもりっきりの多くの料理人は食べ終わった皿を見ることでしかお客様の反応はわかりません。下手をすると下がってきたお皿を見ることさえしない料理人もたくさんいます。自分の造った料理が果たしてどれほどの評価をいただいているのか?召し上がるペース、食べ残されたお皿は見事に料理の美味い不味いをあらわしているはずです。あわせて、食べている姿を見れば、口でどれほどお世辞をいっていても正しい評価はその顔にも表れます。衿を正してそれらをみることがなければ料理人は限りなく自己満足の世界に入り込み、残った料理をお客様の舌が劣ることのせいにしてしまうのです。


もし、閉ざされた料理場で仕事をする職場にいても、お帰りのお客様にご挨拶をしたり、暖簾の影からお帰りの雰囲気を垣間見て自分を振り返ることをしなければ料理人としてのモジュベーションを保つことは不可能です、少なくとも私の場合。いえ、私の場合はお客様の満足度を計るというよりは、手を合わせて「今日はありがとうございました」と心から感謝する気持ちでお見送りをすることを忘れないでいたいと思うのです。