ああ、あの方。。。


毎朝一番で仕入れに出かけると、どちらのお店がどんな食材を持っていかれるかがわかります。未訪のお店でいい品物を必ず手に入れていらっしゃったりすると、そのお店のことが気にかかります。「料理の良し悪しの80%は食材から」と信じている私には、極上の食材を入手しようと心がけていらっしゃるお店が下手な仕事をするわけはないと確信できるのです。




昨日お越しいただいたご夫婦は、奥様の誕生日のお祝いでハシハシと料理もお酒もよく召し上がってくださいました。今朝仕入れに出かけると魚屋の担当さんが「親方、昨日ご夫婦でお客様がみえませんでしたか?あの方”○○”さんですよ。今朝電話で伺ったことを聞きました」と。


”○○”さん、まさしく気にかかっていたお店です。


長い間この仕事をしていますと、正体を明かさなくても同業者はそれとわかるものです。着ている洋服、髪型、言葉遣い、話の端々から料理人は料理人らしさがにじみ出るものです。ところが昨日の”○○”さんは全く気づきませんでした。奥様にもこの商売独特の雰囲気がありません。


どんなお客様がお見えになろうと、お客様で差別することは全くありませんし、今更「高名なだれそれがお見えになる」といわれてもいつも以上の仕事ができるわけはないと悟ってはいるのですが、「きっといい仕事をなさっているに違いない」というお店のご主人であったとわかると、「果たしてちゃんと抜かりなく仕事はできていただろうか?」「失礼はなかっただろうか?」ととても気になってしまいます。何しろ素人の目の届かないところまでわかってしまうご夫婦のはずですから。。。。


まるで抜き打ち試験結果待ちをしている高校生のような気分です。