1970年


NHK連続TV小説「芋たこなんきん」は、ちょうど仕入れから帰ってきた時間帯なのでたまに見ることがあります。連続TV小説をみるなんて何十年ぶりでしょう。


今の番組の時代設定が1970年。若者は「ベトナム戦争反対」を集会で叫び、フォークソングは社会に対するメッセージソングで、一方大阪万博で日本が賑やかだった頃。あの頃「ベトナム戦争反対」を信条にしない若者は愚か者扱いをされていました。政治、社会に対して声をあげたり興味を持たない若者も半端モンでした。知識人とそれに憧れた若者はアメリカに反発しないほうがおかしかった世の中でした。あの時代に憲法改正とか自衛隊派兵になんて言ったら、即右翼扱い。日本の再軍備第二次世界大戦の二の舞・・・と世の中全体が信じていたのです。ベトナム戦争アメリカ=悪者 ホー・チミン=ベトナム民族独立のいい人 ベトコン=米帝国主義からベトナムを開放するために戦う人々 の図式が当然で、東側(共産主義側)を批判的に見る主義主張が通るはずもなかった時代だったのです。ベトナム戦争イラク戦争も9.11も、渦中にあるとき人は、争いをいい人と悪い人と明確に区分することでしか判断できません。


あの時代にたった二十年後の1989年を想像できる人は誰もいませんでした。完璧にアメリカに負けたたった25年前の戦争を思い出して「アメリカ追従は当然」と思う人もいませんでした。


日本人は皆案外人生を深刻に見つめることが好きな時代だったのです。20数年という月日は世の中の空気を想像できないほどずいぶんと変えてしまうのですね。あの番組が1970年の空気感を思い起こさせてくれました。