産地

clementia2006-11-24



最近昔話ばかりする板前であります。チョロット我慢してお付き合いください。


一昔前まで、料理に食材の産地が云々されることはありませんでした。職人は里芋をどう料理するか、鶏肉を素人が出来ない方法でろうやって極上の一皿にするかに腐心しました。使うのは八百屋で売っている普通の里芋、肉屋に売っている普通の肉であって、○○産の里芋、○○の鶏肉ではなかったのです。流通の関係で手に入らなかったこともありますし、生産者も優良な産地であってもそれを誇張することも「売り」にすることもあまりありませんでした。


ところがこの15年くらいの間に流通革命と産地の努力、販促の巧みさが加わって、一気に全国、いえ世界中の「○○産」が叫ばれるようになりました。10年前でしたら高級料理店に限られた「○○産」もいまでは居酒屋さんからコンビにまで○○産を声高にうたっています。



昨日グルメ店を紹介するTV番組は蕎麦屋さん特集でした。紹介されるすべての蕎麦屋さんが「そば粉は北海道産の○○と福島産の○○とブレンドしています」とか「長野の契約農家の・・・」と食材の産地を明確にしています。15年前でしたら、国産の産地を特定したそば粉だけを使える店は、全国でもほんの一握りの超一級の蕎麦屋さんだけであったことを思うと隔世の感があります。


とはいえ、うたっている「○○産」が果たして味に説得力を持つものかどうか?「○○産」と名付けるだけで消費者が「美味しいそう」と勘違いするケースもたくさんあります。


たとえば豚肉。10年前、「鹿児島産黒豚」を仕入れるだけもこの田舎町では一苦労であったのに、今では「やんばる島豚」「白金豚」「寿豚」「あすく黒豚」などなど細分化した優良な豚肉の入荷が可能になりました。反面そういう時流に乗って、これまで「普通の豚肉」を生産していた全国の業者が同じ豚にとりあえずの「○○豚」の名前をつけて売るケースも増えています。味は大きく変わらなくてもだたの豚が「○○豚」と名前がつくだけで売れることもあるのです。


さらにもう一つ、地鶏。鶏は豚肉よりも少し早く「地鶏」と銘打つことが定着しましたが、「地鶏」が「地鶏」と差別化を図るほど美味しいか・・・というと「?」と思うものがほとんどでした。これまでにもいろいろな「地鶏」を試してみても、ブラインドで食べてブロイラーを明らかな差を感じ「おお!」とため息をつくような食材に出会うことはごく稀でした。「ちょっと歯ごたえが違うかな?」「言われれば少し美味しいかな?」程度であったのです。



今回入荷した「比内鶏」は明らかな違いがあります。「おお!」のレベルといっていい鶏肉がやっと手に入りそうです。


ただ、いい食材は有難くても、本来の旨みを味わうために「シンプルに塩焼き」になってしまいそうなの私の実力が問題。