父親たちの星条旗


話題の映画クリント・イーストウッドの「父親たちの星条旗」を早速見てきました。今年の8月にNHK硫黄島生還者を取り上げた番組に衝撃を受け、梯久美子さんの「散るぞ悲しき 硫黄島総指揮官・栗林忠道」も興味津々で読んでいましたから、硫黄島が栗林中将と西竹一大佐の印象だけだった昔とは全く違っていました。


普段から観る映画を選ぶには主演俳優と監督がだれかくらいは必ず確認するのですが、今回さらに脚本、撮影監督、音楽監督や様々な評価まで読み込んでから出かけました。


ストーリーが時系列で語られるのでなく、めまぐるしく時間が前後しても違和感が全くないのは、あの「クラッシュ」を創作してオスカーをとったポール・ハギスが脚本に関わっていることを知っていれば納得できます。音楽の趣味のよさと、アンドリュー・シスターズと見える.コーラスグループまで綿密なのは音楽、特にジャズに造詣の深いイーストウッドであれば当然です。上陸作戦とすり鉢山をめぐる攻防戦の凄まじさは「ミリオンダラー・ベイビー」「ミスティック・リバー」で撮影を担当したトム・スターンならやってくれてあたりまえです。超豪華イーストウッド組スタッフに加え、俳優陣では「クラッシュ」「マイハート・マイラブ」の演技が印象的だったライアン・フィリップが特に心に焼きつきました。


戦争は悲惨だ。戦争にヒーローなどいないと静かに訴える上質な映画は、硫黄島から生還した日米の兵士たちの静かな語り口とそれに反比例する凄惨さを思い起こすことで、より私の中で重くのしかかってきました。いい映画です。