一瞬の感動


CDやLP アルバムの中にほんの一瞬の沸き立つような感動が存在することがあります。


たとえば、スティーリー・ダン「エイジャ」のスティーブ・ガットとウェイン・ショーターのソロ部分。チャールス・ロイド「フォレスト・フラワー」のキース・ジャレットのソロ。チャカ・カーン「恋はパラダイス」のチャニジアの夜のハービー・ハンコックのソロ「ⅡⅤ」(ツーファイブ)の泣かせ節。ハイ・ファイ・セット「ダイアリー」のフランク・ロソリーノのソロ。


あげ始めたら切がないのですが、アルバムのその部分だけを何度も磨り減るほど聞いても繰り返し感動は沸きあがってくるような名演の一瞬があるのです。


先日の日曜日、朝のウオーキングで欠かせなくなってきたNHK FM黒田恭一さんの「20世紀の名演奏」で取り上げられたのは、モニーク・ド・ラ・ブルショルリ。私の貧弱なクラシックの知識では全く未知のピアニストです。


最初にかかった彼女のモーツアルト「ピアノ・コンチェルト20番」の第一楽章のピアノ導入部分にその一瞬の感動がありました。思わずウオーキングの足を止め、天を仰いで酔いしれてしまいそうになるほどのピアニッシモ。これほど美しいモーツアルトはたくさんはありません。もちろん有名な第二楽章も含め、全編が優雅でチャーミングな演奏であったのですが、あの導入部の感動は別格でした。私の知らないこんなピアニストが存在を教えてくださった黒田さんに深く感謝。


思えば、まだタンゴファンにしか知られていなかった頃のピアソラを知ったのも、オルネラ・バノーニを知ったのも、パバロッティの名演「カルーソ」を知ったのも黒田恭一さんの書いた文章だったりFM番組だったりします。私の感動の宝庫です、黒田恭一さん。