蒲焼は難しい


蕎麦とか、鰻とか、寿司とか、天麩羅とか、ひとつの料理だけで店が成り立つような料理はやっぱり難しいものです。


どれも見よう見まねで「それらしき料理」ができることはできるのですが、名店といわれる店のそれに比べたら雲泥の差。とてもお客様にお出しできる水準ではありません。




鰻というと「裂き三年、串打ち五年、焼き一生」と言われます。いつもなら「それほど大げさなモンじゃぁありません」と言ってしまう私なのですが、実際蒲焼をおいしく仕上げるのはとても難しいのです。そのためだけに修行に出てもいいくらいやっぱりレベルの高い店の蒲焼は、普通の和食の職人が簡単にまねできるものではありません。昔、大阪のさる超高級料亭にはかならず野田岩さんから職人が一人蒲焼だけのために出向いていたと聞いたことがあります。それほど蒲焼単体の仕事は違うのですね。


特にこの地は浜名湖をひかえ、他の土地の方々からみれば鰻屋以外の和食でも蒲焼くらい出せるのが当たり前と思われているのか、注文のときに「蒲焼も入れてね」とおっしゃるお客様もたくさんいます。そんなときは素直に「ゴメンナサイ。専門店へどうぞ」と申し上げるようにしています。




昨日の休み、お世話になった方のお使い物の白焼きと一緒に自宅用でも鰻丼を作りました。素人からみればそれなりの水準には仕上げられるのですが、「私の仕事が一番」と大きな顔で言えるようなものでは全くありません。素人ではない家族の反応は「まっ、我慢しとくか・・・」ってな感じ。