ワイン日本酒の偏見


「極上のワインは、料理と一緒よりもチーズかバゲットだけで飲んだほうが美味しい」という方がいらっしゃいます。逆に「料理が美味しいと、おいしすぎるワインは邪魔になる」という方も。


偉大なワインはそれだけでも美味しいことは理解できますが、私は料理人ですので、どんなワインもお料理と一緒のほうが美味しく楽しい時間をすごせるように思います。


ただ、残念ながら懐はいつも寂しい方ですので、¥15000以上の料理に20年以上を経たグランバンを気軽に注文できないという現実は確かにあります。極上の料理に極上のワインを飲むゆとりがないからといって、私が「極上ならワインだけのほうがいい」といってしまうのは、ただのひがみ根性になってしまうので口にしないだけのお話。「料理がおいしすぎると・・・」についてもしかり。結局両方美味しいほうが嬉しいという意地汚い奴なわけです。偉大なワインが料理の邪魔になったことも(経験は少ないですが)、いい料理に安物ワインを注文したこともありません。




「日本料理にワイン? 相性はいいの?」「相性がいいわけがない」という方もいます。「お飲み物はいかがいたしましょうか?」のお伺いに、「日本酒でもワインでも料理に相性のいいものを」とおっしゃる方もいます。


ことワインになるとどうしてこうまで相性にこだわるのでしょう(”こだわる”ってこういう使い方が好きです)お酒はまず「今飲みたいと思うものを飲む」が最初ではないかと思うのです。もちろん相性も大切でしょうが、カップル二人ででコース料理を食べるのに、一皿ごとにワインの相性を考えることはアルコール許容量的に無理があるでしょうし、一皿ごとのグラスサービスがあったとしても、私なら好きなワイン一本を選びます。それが白ワインだとしても、お気に入りの白ワインでしたら迷うことなくそれを注文するでしょう。相性のために「好き」を犠牲にすることはないのです。食事は毎回がワイン会ではないのです。


ワインも日本酒もたかがお酒です。料理とお酒両方を楽しめることが優先順位の一番にくるべきです。お酒を選ぶプロとしてもそれを一番大切にお客様に接していなくてはいけません。マリアージュを否定するわけではありませんよ。ワインに肩肘張り過ぎないほうが楽しいと思うだけです。