山下達郎「ソノリテ」


一人のミュージシャンが30年に渡ってファンの心つかみ続けるというのは稀有な事です。


ファンは皆、そのミュージシャンの音楽に長い間感動しつづけるのですが、ある人はその音楽を「ワンパターン」といい、ある人は「大いなるマンネリ」といい、ある人は「確立されたスタイル」といいます。


もしかしたら私は年齢を重ねていくうちに山下達郎さんに「寅さん」をどこかで求めていたのかもしれません。自分の頭の中でできあがった山下達郎しか受け入れられないとしたらファンとしては寂しい事です。


がしかし、寅さんの山田洋二監督は寅さんの後に「たそがれ清兵衛」を作る胆力をしっかり養っていた上に、寅さんから清兵衛へ至っても彼の映画には根っこのところで人間の優しさを表現する一貫性もあるのです。達郎さんはきっとそんな創造力をもった人であるはずで、ファンはそれを見極めてこそ長いファンだと確信しています。



何度も新作「ソノリテ」を聞いていると最初に感じた小さな違和感は次第にほぐれてきてはいるのですが、私のような卑小な音楽のイメージしか喚起できない人間には、二曲目「KISSから始まるミステリー 」のラップ部分をとぱらっていただき、四曲目「忘れないで」を奥様(竹内まりあさん)のレパートリーにしていただくだけでアルバムのイメージはかなり変わってくるのではないかと思うようになってきました。


しかしファンってのは全く勝手なもんでありますな。