けなし下手


けなさないまでも褒めていただけないことは多々あります。「この料理、このお酒、結構自信あるんだけどなぁ・・・・だめ?」と心の中でつぶやく事は頻繁です。自分の力のない故か、お客様のレベルが高すぎる故か、まっ、「美味いなぁぁ」といっていただけるのが当たり前と思う事自体問題があるのかもしれません。


しかし、ネット上でまき散らかされている素人グルメ評のすさまじさはどうでしょう。私なんぞのイジイジした愚痴などおよびもつかないほど、飲食店関係者は心を痛めてと思うような批判にあふれた文章がテンコモリのサイトをみることがあります。私から見ればかなりの名店と思われる店でも一刀両断・・・・というと聞こえはいいのですが、「これほど否定的に店に接していて気持がささくれないのだろうか?」という悲しい罵詈雑言の連続です。


料理店へ出かけるというのは楽しい思いをするために出かけるのであって、料理を批評するためでも、あえて苦言を呈して料理業界を正しい未知に導くためも、コストパフォーマンスをあげて客も店も栄える提言をするためでもありません。


たとえば、以前に私が「素晴らしい」と書いた新橋「しみづ」さん。まずは否定し、批評的な見方をするグルメ評論家から見ると、「酢飯が堅すぎる」「塩味が効きすぎている」「こはだの〆方が強すぎる」「座席が狭い」「コストパフォーマンスと雰囲気が悪い」「あの程度なら近所にいくらでもある」とたっぷりのダメだしをした後で「でも不味くはない」という程度の褒め(?)言葉。


少々心を感じる素人批評家では、すしの味わいと仕事ぶりを褒めた後で、「椅子をもうちょっと座りやすくしてくると・・・」とか「値段がちょっと・・・」などという苦言で締めくくるお決まりのパターンです。



私から見れば、すべてのダメだしをされているマイナス要素は思い違い、個人の嗜好の違い。それでもあえて言うなら、あらゆるマイナス要素は、あの味と技術の質の高さをあの場所とあの値段で実現している事で差っ引けば絶賛されてあまりあるお寿司屋さんであると断言します。「カジュアルに最上質を楽しめる」でいいではないか!・・・と。


大体料理人などというのは、たくさんのお褒めの言葉をいただいても、最後に「○○がねぇ・・・」と取るに足らない部分でダメだしをされただけで一週間は悩んでしまう人種です。私なんぞその通常の三倍は落ち込みやすい達で、褒められればいくらでもがんばるヤツです。褒めていただいた方の10倍、けなした方のことを覚えています。


ネット上の素人グルメ評論家のことを考えただけで、東京で出店なんて怖くて出来ない。