レパートリー

ふと思いました。自分の料理のレパートリーっていくつくらいあるのか?鰻や蕎麦のように一品で勝負する店はありませんし、お決まりの料理だけでお客をよぶ店でもありません。常に料理は入れ替わっていますので、それなりの数のレパートリーを持っていなければ商売としては成り立たないのですが、人様にその分量を自慢できるほどたくさんのレパートリーを持っているわけではありません。


修行時代は雇われ職人ばかりの中で修行しましたので、「職人というのは日本料理のあらゆる仕事が出来なければいい職人とはいえない」という雰囲気の中で育ちました。事実あの当時、店に雇われる料理長は、オーナーのあらゆる料理の要求を軽々とこなさなければ高給を取れませんでした。


例えば焼き物。一つの魚をみて塩焼き、照り焼き、西京焼き、木の芽焼き、利休焼き、若草焼き、黄身焼き、海胆焼き、難波焼き、南蛮焼き、若狭焼き、奉書焼、杉板焼き、黄金焼き、翁焼き、酒塩焼き、田楽焼き、源平焼き、卯の花焼き、けんちん焼き、山椒焼き、塩辛焼き、ふくさ焼き、印籠焼き、蒲焼、幽庵焼き、唐墨焼き・・・この程度の仕事はすぐに思い浮かべて、どの焼き方がその魚に適しているか、献立の中で収まりがいいかなどを判断しなければなりません。このくらいの引出しがあることは、少々経験のある料理人であれば普通のお話なのですが、実際には季節に見合ったホントに美味しい仕事というのは案外限定されてしまうのですね。


私ン処などいついってもおんなじ仕事だ・・・と思われているお客様もいらっしゃるかもしれません。ほんとはそこそこ仕事は知っているんですがねぇ。。。。美味しいものってそれほど多くはないのですよ。。。って言い訳かぁ?