コンビニ侮るべからず

ある有名ホテル和食の調理長と私は同世代。仕入れのときに立ち話をするだけでも勉強になるほど、技術的にも若手掌握術的にも優れた方です。


彼とホテルのの名前を冠したお弁当が、期間限定でコンビニで販売されたことがありました。


「いかがでしたか例のお弁当」と私。


「いやーー、いい勉強になりました。あの業界は凄いですよぉ」


コンビニ弁当といってもプロデュースのような仕事で、献立を提案し、試作と検討会議を重ねるような内容だそうで、ホテルで何万食も作るわけではありません。ただ、お話から聞くコンビニ業界のレベルの高さと厳しさは並大抵ではなさそうです。


本社からやってくる若い社員の能力の高さや、企業としての味の均一化、規格化、大手広告代理店もからんだパッケージング、商品企画などなど。


ちょっと前の私なら、コンビニ弁当に関わることなど職人の魂を売り渡したかのように思ったのでしょうが、そんな浅薄な考えを持っていた自分が恥ずかしく感じるほど昨今のコンビニ業界の技術革新と商品開発の力は侮れないのです。


おそらく同じ値段帯で街の料理屋や弁当屋が対決しても敵わないであろう力を充分に持っていると思って間違いないでしょう。上回るものといえば、「真心」とか「手作り」とかいう手垢のついた感性と、職人が身を削って得る人件費のやりくりくらいかもしれません。


今回お聞きした企画にしても、経験20数年の力のある調理長技術とノウハウの一部を、コンビニ側はデータとして蓄積したわけで、伝承されるかどうかは後継者の意欲次第・・・・のような板前社会の個人に頼った崩れやすい体質とは決定的に違うのです。


「値段が違うから」とか「職人の技術が違うから」などというのは、幻想に近いお話になるという認識を持っていないと淘汰されてしまう時代が必ずやってきます。職人として生き残れるのは切磋琢磨を重ねた極小数となってもおかしくありません。


恐るべしコンビニ。