京野菜

私ン処でもよく登場する「京野菜」には定義があることをご存知でしょうか。京都で採れた野菜ならなんでも京野菜と呼んで言い訳ではないのですね。


京野菜というのは京都府が1987年に「京都の伝統野菜」として決定されたものを言います。ものすごく古い伝統がありそうですが、案外最近のお話なのです。


辛味だいこん、青味だいこん、聖護院だいこん、鶯菜、すぐき菜聖護院かぶ、 みず菜、壬生菜、畑菜、もぎなす、賀茂なす、山科なす、鹿ヶ谷かぼちゃ、伏見とうがらし、山科とうがらし、桂うり、えび芋、堀川ごぼう、柊野ささげ、京うど、京みょうが、九条ねぎ、京ぜり、くわい、京たけのこ、じゅんさい、聖護院きゅうり


なんていうのは店で使っていたり、個人的に食べたことのある野菜。


時無だいこん、桃山だいこん、茎だいこん、佐波賀だいこん、松ヶ崎浮菜かぶ、佐波賀かぶ、大内かぶ、舞鶴かぶ、田中とうがらし


となると、食べたことも見たこともありません。


因みに有名な万願寺唐辛子や鷹が峰唐辛子は「伝統野菜に準じる京野菜」と定義され、金時人参などは「ブランド京野菜」と呼ばれるのだそうです。


今でこそ京野菜といえば世間にも知られブランドとして人気のある野菜となっていますが、1987年以前には大量消費、核家族化など消費者の変化によって京都で作られていた稀少な野菜は危機的状況であったのだそうです。マーケットで売られる普通の野菜、大量に消費され安価で出回る野菜に押されて風前のともし火という時代もあったのです。その危機感を生産者が打破すべく「京野菜」のブランド化と流通の努力を重ねて今があるのです。スローフードやら無農薬有機野菜の大ブーム以前からの長い地道な取り組みをしていたのですね。


こういう過程を知ると、「お役所が決めた定義なんて」などとお気楽な批判はできませんね。


農家さんの強い意志が伺えるような京都の野菜を使わせていただけるのは、料理人としても幸せなことです。