お出かけ

首都圏に生活していると、電車や地下鉄を乗り継いで一時間くらいかけて食事に出かけることはそれほど苦痛には感じられませんが、地方都市ではちょっとしたお出かけです。「わざわざ食べに行く」感が強くなります。


昨日家族が久しぶりに勢ぞろいして出かけたのは豊橋のイタリアンレストラン「フラスカティ」さん。車で街中の渋滞を考えると一時間半、電車でも待ち時間と歩きを考えると一時間はかかるのですが、時間さえあれば家族全員が「わざわざ」でも出かけたいと思うレストランです。


シェフのおまかせは前菜に白海老フリット、北海蛸の吸盤のから揚げ、オリーブにお肉を詰めた揚げ物、名前を覚えきれなかったけど熟成がばっちりのチーズ。


オーソドックスな牛肉のカルパッチョ


パスタは手打ちのタリアテッレ鮑のソース


甘鯛(地物)のソテー 茄子のピュレ添え(中骨はフリットにして)


シャラン鴨のロースト 牛蒡のソース


ドルチェ各種


牛肉のカルパッチョなんぞ、どこの店でも出てくる献立なのに、シェフの豪胆さと繊細さ、潔さが皿に表れています。牛肉とルッコラ、これでもかとたっぷり散らしたパルメジャーノ・レッジャーノ、EX.バージンオイルのバランスがよくて、ぎりぎりまでしっかり振った塩味のパンチが効いています。自家製のオリーブオイルを練りこんだパンで皿を拭い取るように平らげてしまいます。


パスタも手打ち麺を初めて美味しいと思ったというほどのレベルの高さ。メインの二皿は言わずもがなです。


料理というのは料理人の性格が現れるものです。イタリアンがイタリアンであるためのラテンの気質が日本人のシェフの血の中に流れているのが感じられます。それでいて昔あるイタリア人のシェフの料理で感じられたような粗雑さがありません。奥様のサービスは笑顔の中に切れ味があって、ワインも安心して任せられます。


わざわざでも出かけたい隣町のレストランは、ご夫婦のどちらかが欠けても成立し得ない気持ちのいいイタリアンであります。めったに実名をあげてお奨めしない板前のお奨めレストランです。