米農家さん


日本人にとって大切なお米のことは、料理を生業としていながらちっとも知りませんでした。


というのも、平成7年まであった食管法によって米つくりや米の流通は政府によって管理され、農家さんは自分の作りたい米を作り、売りたいように売ることができず、消費者も特定個人の米どころか、特定の生産地も、特定の種類も手に入れることができない時代が長く続いたという現実がありました。


自主流通米以前の昔は、どの県で取れたか位の特定ができるだけでした。


今や規制が取り払われ、意欲のある農家さんのお米を直接いただくことができる時代がやってきました。


先日お話した米つくり農家さんに休日を利用してお会いしてきました。車で40分くらい場所にある集落は、戦争前は主に近郊の料亭などで多く引き合いのあるような米名産地であったそうなのですが、今では売ることを目的に米つくりをしている農家さんはごくごくわずかです。


聞けば、大雑把ですが「静岡米」というと、東京あたりの米販売店でももっとも人気のない米なのだそうで、年によるばらつきが激しく安定しない米としての評価があるのです。


しかし、どの分野でもそうですが、志の高い方の手仕事というのはそうした評価を超えたところにあるものです。


お会いした乗松精二さんは米作りを熱く熱く語ってくださいました。


米つくりの具体的な内容はすべて数値で裏づけされ、意欲や思いだけで空回りする方ではありません。勉強不足の私などお伺いするお話の20%も理解できないほど高度なお話なのですが、米を作るというのはこれほど難しいものなのか、ということはよく理解できました。


素人の聞きかじりをここでご披露することは差し控え、これから何度かお話を伺い、秋の新米の頃にはお米自体を味あわい、店でご披露できるかどうかを検討しなくてはいけません。


10種類以上の米を作られる乗松さんの提案では、季節によって米の種類を変えたり、献立の種類によって米を変えることもできそうで、上手くいけば半年後にはご飯の献立が少しづつ変わるかもしれません。


地元の顔が見える生産者さんの優れた素材が使えるようになるという理想形にまた一歩近づけるかもしれません。


しかし、世の中には凄い人がいくらでもいるもんです。