スンマセン


「スンマセン」「スンマセン」


修行時代に何度言ったことでしょう。


ドンくさくて、手先が不器用な私はともかく謝ってばかりいました。


普通高校卒業後すぐに調理場に入るのが当たり前だった時代に、20歳を過ぎたオジサンが何もできないずぶの素人まま、何をやっても出来が悪くて怒られ続けるというのは格好が悪いものです。


あまりに何度も怒られるものですから、それなりの処世術も身につけて、怒られて神妙な顔をした5秒後にはへらへらしているものですから、「お前は打たれ強いヤッチャなぁ」と妙に感心されたりしたものですが、実はそれなりにナイーブで表面を取り繕うのが上手くなっただけだったのです。


ですからできない人間の悩みや、怒られる人間の痛みもそれなりに理解しているつもりです。


今でも調理場で指示をした仕事を若いスタッフが失敗したりするとき、そのスタッフの理解度に合わせた説明をしただろうか?そのスタッフの力量をちゃんと把握していただろうか?仕事の途中で目配りを忘れていなかっただろうか?と自分に問いかけるようにしているつもりなのですが、多くの場合スタッフの失敗の50%くらいは指示を出す私に問題があるのです。


「そんな甘い事言ってないで、怒るときはバーーーンって怒ったほうが厄介でないし、後々その子にためにはいいんだぞ」と先輩に忠告されますが、いったん怒ってしまうと本気になってしまう私には「怒る」という修行は荷が重過ぎます。


上に立つ人間の「怒る」という行為は難しい。