西京漬け


鰆の西京漬けという料理があります。


京都の西京味噌に魚を漬け込んでこんがり焼くこの料理は、秋から冬にかけての定番中の定番です。ただ、定番、お決まり過ぎてお客様にはありきたりに思えてしまうかもしれません。


私ン処でも、お弁当などにはよく使っているのですが、お座敷のコース料理の一品となると献立の中に組み入れるかどうかとなると躊躇してしまいます。


鰆はもちろん御前崎、福田あたりであがった遠州灘の3-5kgクラスのもの。味噌は静岡の食材屋さんから定期的に仕入れている西京味噌の粒味噌。隠し味に使う甘酒は近所の糀屋さん健ちゃんの処で作ったもの。


味噌に漬けること約3日、遠火できれいに焼き目をつけた西京漬けは、よくある幕の内弁当に入っている鰆の焼いたヤツとは月とスッポン、天と地ほどの違いがあると思っています。自分で食べてみても手前味噌ながら「美味い鰆だなぁ」と感じるのですが、高いお足を頂戴する献立の中に駅弁の中にも入っている焼き物でいいのだろうか?


「なぁんだ、鰆の味噌漬けかぁ」と思われてしまうのか?


「えっ!鰆の味噌漬けってほんとはこんな美味しいの?」と思っていただけるか?


後者のような形というのは、当たり前のものをホントに美味しく・・・・という私の理想系でもあるのですが、もう一つ突込みが足りないような気がします。


こねくり回した創作料理もどきにはしたくないし、素材の素晴らしさはストレートの表したいし・・・・しばらく悩みは続きます。