10月のクリスマス


あるパティシエさんとお話をしていて驚きました。


「秋にクリスマスケーキを作ってしまう店なんて珍しくないんですよ。早い店だと10月。卵や果物が安いですから」


冷凍技術が進んだ現在では、ケーキを冷凍保存することはごく普通のことなのだそうです。


特に一日に何百何千というケーキを売らなくてはいけないクリスマスの時期であれば、冷凍しなければ数に対応できず、コストを突き詰めていけば材料が安い時期に作ることがあってもおかしくはありません。


一般の顧客が「これは冷凍」「これは生」と、見た目や食感で区別することは多分できないのですから、安ければどちらでもいっしょ・・・・・と言ってしまっては身も蓋もありません。


冷凍が悪で、生が正しい、というわけではないのですから。


イチゴが美味しい時期しかイチゴのショートケーキを置かない店が何件あるでしょうか。モンブランは栗の時期だけという店は?


人気商品でお客様の要望があるのだからいつでも用意してあるのが正しいのか、時期の果物しか使わないのが正しいのか。それは店のポリシーによるのでしょう。


職人魂に燃えて、「季節の素材だけを使う」とがんばって始めた店も、お客様の要望という名のもとに妥協していくケースも多いと聞きます。


ケーキ屋さんに季節感を求めるという発想自体が消費者にもありませんでした。


一年を通して刺身のツマが大根と大葉という和食屋さんがどれほど多いか。もっと言えば菊の花でさえ通年でも「まっ、こんなもんか」と消費者も思い、職人もそれに甘える。


市場にいつでもおいてあって、安いのですから、「この客単価じゃ仕方ないじゃん」と両方で妥協してしまうのですね。


冬の茄子、胡瓜。夏の大根、白菜。春のキノコ。秋の筍。意思を持たなくては使うことに疑問を持たなくなってしまいます。


いつでもあるんだからそんなに肩肘張らなくたって・・・・・


肩肘張ることをお客様が認めてくださるかどうか・・・・が一番大事なのです。