当て塩


魚などに塩を振ることを「当て塩」といいます。


塩の量とかタイミングなどは用途によって様々です。


例えば、西京味噌などで漬けて焼く味噌漬けの場合、魚には「えっ、そんなに」というほどたっぷりの塩をあて、半日程度置いてから酒で塩を洗い流して西京味噌に漬けます。たっぷりの塩でも浸透圧の関係で魚の身にはそれほど塩辛さは残りません。味付け程度の当て塩ではしっかりした味の味噌漬けにはなりません。


若狭焼きにする場合には、魚に軽めの塩を当て、一時間ほど置いてから脱水シートではさんで一日寝かせ身を熟成させます。焼くときには薄口醤油をベースにしたタレをかけながら焼きますので、最初の当て塩というのは下味をつけるという意味と、熟成のための脱水という意味があります。塩味が一日かけて身全体にじんわり染み通っています。


シンプルな塩焼きも当て塩のタイミングは一つではありません。


鱸などの場合、塩焼きの変形の油焼き(最後に油を塗りながら焼き上げます)にすることが多いのですが、当て塩のタイミングは、火にかける40分前くらいが目安です。若狭焼きほど塩の回り方は身全体にいきわたってはいないのですが、塩味がストレートに楽しめます。


鯛や鯵などの塩焼きでしたら、私なら30分前に当て塩をします。30分経つと振った塩が少し溶けかけて身にも少々回る頃合です。


これが鮎でしたら焼く直前に塩を当てます。塩のクリスピーな食感がそのまま楽しめて鮎には適していると思うのです。


塩が魚の身にどのようにいきわたり、どんな味に感じられるか。


焼き方と魚との相性によってそれぞれに違ってくるのですね。


ご家庭でも鮮度のいい魚が手に入って塩焼きにしようというとき、試しに30分前に当て塩をしてみてはいかがでしょう。微妙な味わいの違いを感じられると思いますよ。