大原 びわっ貝
千葉房州 大原の鮑です。
びわっ貝とも呼ばれる雌貝。
まさに極めつけです。
「数寄屋橋次郎」のご主人小野二郎さんの本でも「これ以上はない」と口を極めて絶賛されている鮑で、超稀少品です。
入荷すればどんなことをしてでも欲しいというおすし屋さんは、東京でも最上級クラスの店だけで、1990年代後半には絶滅を恐れて5年間禁猟だったという噂も聞きます。
一般的な鮑は500gを超えれば大きいほうといえますが、この鮑は1kg強の超特大です。大原の鮑を名乗るためにはこの大きさがなければ恥ずかしいということらしいのですが、それにしても大きい鮑です。
普段は2時間を目安に蒸し上げる鮑も、この大きさと肉厚ですので3時間蒸してみました。
包丁を入れると「あれ?なんだこれは!」
レベルの違う食材は食べなくても包丁を入れたと同時に指先で理解できます。包丁の入り方がまるで違うのです。ねっとりして柔らか、すっと入るのにモッチリ感があります。
香りが豊かで、一切れ食べるとミルキーな味わいと味の幅の豊かさ濃さが口中に広がります。
肝を裏ごしして酒と出汁でのばし、少々卵黄でとろみをつけて、蒸したてにかけます。
値段をいうのは野暮なお話ですが、普通の鮑の倍。小さく切った一切れが・・・・・恐ろしい値段になります。
原価にあうとかあわないとかのお話ではなくて、最上の素材を知らないというのが職人的にはかなり辛い、と自分の勉強のため(というよりただ食べたいがためかもしれません)使ってみました。
世の中にはすごい食材があるものです。
香港「福臨門」でいただいた一個¥50000という大きな干し鮑の煮込みの味わいに驚いたのと同じくらいの驚きです。
蒸し鮑を一度も食べた経験がない方が、最初に食べた鮑がこの大原の鮑でも「ふーーん、まっ、美味しいよね」としか感じなくても、いろんな鮑を食べた方が食べてれば「おお、鮑というのはこんなに凄いものか」と感動を味わえるのかもしれません。
昨日召し上がっていただいたお得意様ご夫妻は幸いなことに後者。
お客様も私も鮑も幸せな瞬間でした。