悪しき風習


昨日の続きであります。


「シェフ、板長を斬る 悪口雑言集」という本では、和食部門で取り上げた店ほとんどで語られている「説明しないコース設定」のお話をしています。


例えば


この店も日本料理の悪しき商習慣「説明しないコース設定」制度をとっています。「食材や料理ほうはどう違うのか。簡単でよいから説明して」の譲歩した質問にも「品数は一緒です。あとは食材が違うだけでして」と説明責任を果たしません。


別の店では


和食の悪しきしきたりとも言うべきものが、この新進気鋭の店にもありました。予約時の電話でコースの値段の決定を迫られます。二つのコースはその日の仕入れで変わるので説明できないと言われました。


また、別では


最近の日本料理店の悪弊としていつも疑問におもっているのが、この各種値段の違ったコースをいくつも設定しているのに、その違いを明確にしていない点、「何が違うのですか」と聞いても
・・・・・
○○でも予約時にどのコースにするか決定を迫られます。へそ曲がりな私はいつもどおりどの店でも、訪問時に決めたいと主張して了解を得ているのですが、・・・・あらかじめ用意しなければならないわ食材というのはなんなんでしょう。中華スープの「ファッテューチョン」やフレンチの「プレ・サレ」のように仕込みや仕入れに時間を要する料理があるのか疑問です。


逆に


この店のましなところは価格の違いは品数の違いのようなのです。


とか、


この店は最近の和食のお約束のとおりおまかせコースのなのですが、一万円だけのコース設定です。これならば、早くコースの値段を決めろと店のオヤジにいじめられることもなく・・・・


と、
すべての店でこの値段設定と、その説明を求めていて、説明がいらない店はかなりの減点になっています。


これが「最近の悪しき風習」か?というと、最近のものではないのですが、料理が¥8000-10000以上の和食の店ではアラカルトがあっても少量、コースの献立をお客様に説明した上でその場で決めていただく店は少ないように思います。逆にこの著者が大嫌いな多店舗展開をしていたり、キャパシティーが50名を超えるような店では、コースが明確に書かれている場合が多いような気がします。(サービスが口頭で説明できないだけかもしれませんが)


確かに私ン処もその「悪しき風習」をそのまま踏襲している店であります。


「値段の違いは何?」と聞かれれば、まずは「使う素材の違いです」と説明するのですが、「詳しく」とお申し出があれば、かなり詳しく説明をさせていただきます。


ですから説明責任は果たしているつもりですが、できれば事前にお値段を決めていただきたいという思いは他店と変わりません。


値段の相違を食材に反映するためには、毎日の仕入れでいかにいいものを手に入れるかにかかっているわけで、いい食材というのは養殖や冷凍ものと違って値幅も様々、その日にほんとに入荷するかどうかもまったくあてにならないのです。鮮度の点でもその日予約分をこなす量を仕入れるのは当然で原価率にも響いてきます。


この著者のようにどうしても素材の違いを明確にしろと言われれば、早朝お客様に市場から電話をして「○○円でしたら、この食材、○○円でしたらこちらの食材をこういう調理法にいたしますがいかがしましょうか?」とお電話しなければなりません。両方の高価な食材を仕入れて、来店時決めていただけば、倍の量を仕入れなければなりません。本に出てくるようなキャパシティーが15〜30人程度の店では、使うかどうかわからない食材を常に予備的に仕入れるわけにはいかないのです。


とはいうものの、コースの違いの説明をきちんとすることは本来しなくてはいけないことです。ここまで「こだわって」いる客がいることを知ると言う意味だけでもこの本を見る価値はあったのだと思います。


私ン処でも一見のお客様が電話で質問されれば、主人が電話口で説明するのが当たり前ではあるのですが、店先に献立を掲げたり、サイトで毎日の献立を書き換えると言うことはできないでいます。献立も「出てきてからのお楽しみ」と考えて、各お客様別に書き上げてはいてもお見せすることはありません。


お客様の門戸を広げるという意味でも、安心して選べるように献立を明らかにすることは重要なのかもしれません。


私たちのようなコースのみの店は真剣に考えなくてはいけない問題だと思います。


ただ、私ン処では、初めてお見えになって献立の説明を求めた方も、二回目からは説明を求めない、食材に違いを知った上でコースを選択するというわけではない・・・・というのは明らかな傾向で、99%のお客様にいえます。


ある意味「この店は任せておいたほうが安心だな」と思っていただいているのか?それとも説明を求めるお客様は二度と来ていないのか?


どっちだろう??


この本には良し悪しはともかく様々な問題提起があります。おもしろそうなのでそれはまた。