新たな挑戦


日本の古酒界の小さな巨人達磨正宗」さんの大吟醸 淡墨桜の味を聞かせて頂きました。


無濾過の生でとったものは、わずかに四合瓶で20本だけなのだそうです。


酸と甘みのバランスが絶妙な大吟醸です。こういうバランスのお酒を飲んだのは初めてです。昨年のものとは明らかに違います。


驚きは日本酒度マイナス2。


世の中にあふれる大吟醸の多くは淡麗、吟醸香、辛口を目指すもので、日本酒度はプラス5以上のいわゆる辛口が当たり前です。


舌に感じる甘い辛いの判断と日本酒度の数字は必ずしも一致しないものではあるのですが、杜氏さんが意識してマイナス2という甘口で酸味とのバランスで飲ませる大吟醸を目指したというのは、達磨正宗さんならではことです。


日本酒の歴史に残る「昭和54年 純米甘口果実香」は甘口であるからこそ20数年の熟成を経て偉大な結果を生みました。


寝かして古酒にするべく生まれた新酒を生のままでいただける「ファースト・キッス」も甘口と酸味のバランスで個性を際立たせる日本酒です。


酸味と甘み、他の蔵ではできない味の実績をもつ蔵が、米でトロッケン・ベーレン・アウスレーゼやイケムに肩を並べる大吟醸を創りあげてくれるかもしれません。


昭和47年、辛口こそが日本酒という時代に、全く逆行して造り始めた古酒の結果を20年後に求めたように、淡麗、吟醸香、辛口の大吟醸が当たり前の時代に始めた新たな挑戦が別世界の大吟醸を生み出してくれ可能性があります。


道は厳しいでしょうが、大きな期待をもって見つめていきたいものです。